バイン・ザー・ロンとは|「豚の皮」という名のベトナムの層菓子、材料と食べ方

バイン・ザー・ロン(Bánh da lợn)は、緑と黄色の層が何枚も重なった、ベトナムの蒸し菓子です。名前を訳すと「豚の皮の菓子」。ただし豚肉もラードも入っていません。材料はタピオカ粉と米粉、ココナッツミルク、緑豆で、もちもちとした弾力のある食感が特徴です。

この記事では、名前の意味と発音、材料と作り方、層ができる仕組み、東南アジアに広がる似た菓子、ベトナムで食べるときや家で作るときのポイントをまとめます。

バイン・ザー・ロンの基本

  • ベトナムの伝統的な蒸し菓子。南部でよく食べられる
  • 名前は「豚の皮の菓子」という意味だが、豚は使わない
  • タピオカ粉・米粉・ココナッツミルク・緑豆・パンダンが主な材料
  • 生地を1層ずつ流しては蒸し、何層にも重ねる

バイン・ザー・ロンとはどんなお菓子か

ベトナム

バイン・ザー・ロンは、薄い生地を1層ずつ蒸し重ねて作る、ういろうに近い菓子です。切り口には緑と黄色の縞模様が並び、市場や屋台では、四角く切り分けたものがパックに入って売られています。

緑色はパンダンという植物の葉から、黄色は蒸した緑豆から出る色です。パンダンは東南アジアで広く使われるハーブで、甘くやわらかな香りがあり、「東南アジアのバニラ」と呼ばれることもあります。

食感は、ぷるんとしていて弾力があり、歯を入れると層ごとにはがれるように切れます。甘さは控えめで、ココナッツミルクのまろやかさと、パンダンの香りがあとに残ります。

「豚の皮」という名前の意味と発音

語意味
Bánh(バイン)粉を使った食べもの全般。菓子、ケーキ、パンを含む
da(ザー/ヤー)皮
lợn(ロン)豚

ベトナム語の「バイン」は、日本語の「菓子」よりも範囲の広い言葉です。サンドイッチのバインミー(bánh mì)も、同じ「バイン」がつく食べものです。

名前の由来は、層になった見た目や、もちもちとした弾力が豚の皮を思わせるからだとされています。あくまで見た目と食感のたとえで、動物性の材料は使いません。

発音は地域で違います。ベトナム語の「d」は、北部のハノイでは「ザ」に近く、南部のホーチミンでは「ヤ」に近く発音されます。そのため日本語では「バイン・ザー・ロン」とも「バイン・ヤー・ロン」とも書かれます。

材料と、それぞれの役割

主な材料

  • タピオカ粉:キャッサバの根から取るでんぷん。弾力のある食感を生む
  • 米粉:生地にほどよいコシと重さを加える
  • ココナッツミルク:コクとまろやかな風味を加える
  • 緑豆:皮をむいて蒸し、つぶして黄色い層に使う
  • パンダンの葉:絞った汁で緑色と香りをつける

食感の中心はタピオカ粉です。タピオカ粉は加熱すると透明になり、強い弾力が出ます。米粉を合わせることで、ぷるぷるしすぎず、切り分けても形がくずれない生地になります。

層の色は、緑と黄色の組み合わせが定番です。ほかにも、紫色の葉「ラーカム(lá cẩm)」で色をつけたものや、タロイモやドリアンを使ったものがあります。

層ができる仕組み

バイン・ザー・ロンの層は、一度に作るのではありません。型に生地を薄く流して蒸し、表面が固まったら次の色の生地を流して、また蒸します。これを何度も繰り返して、1層ずつ積み上げていきます。

前の層が固まりきる前に次を流すと、色が混ざって縞がにじみます。固めすぎると、層どうしがくっつかず、切ったときにはがれてしまいます。きれいな縞模様は、蒸し時間の見極めで決まります。

層の厚さは1cm前後が一般的です。層が薄く、数が多いほど手間がかかり、仕上がりも美しくなります。

東南アジアに広がる層の菓子

菓子国・地域特徴
バイン・ザー・ロンベトナム緑豆とパンダンの2色が定番
カノム・チャン(Khanom chan)タイパンダンやココナッツミルクの層を重ねる
クエ・ラピス(Kue lapis)インドネシア、マレーシア色とりどりの層を重ねる蒸し菓子
九層糕中国南部など9層に重ねるとされる蒸し菓子

タピオカ粉や米粉とココナッツミルクを使い、層を重ねて蒸す菓子は、東南アジアの各地にあります。材料が共通しているのは、どの地域も米とココナッツ、キャッサバがよく採れる土地だからです。

タイのカノム・チャンは、「チャン」が「層」を意味する名前です。インドネシアやマレーシアのクエ・ラピスは、赤や緑などの鮮やかな色が特徴です。国は違っても、1層ずつ蒸し重ねる作り方はほぼ同じです。

ベトナムの伝統菓子

菓子特徴
チェー(Chè)豆や果物、ゼリーなどをシロップやココナッツミルクと合わせた甘味
バイン・ボー(Bánh bò)米粉を発酵させて蒸した、気泡のある菓子
バイン・チュン(Bánh chưng)旧正月テトに作る、もち米と緑豆と豚肉の四角いちまき

ベトナムでは、米やもち米、豆、ココナッツを使った菓子が多く作られてきました。バイン・ザー・ロンも、そうした米の国の菓子のひとつです。バイン・チュンのように、行事と結びついたものもあります。

南部の菓子とココナッツ

ベトナムは南北に細長い国で、北部と南部では料理の味つけが違います。一般に、南部の料理は北部より甘めで、ココナッツミルクを使う料理や菓子も多くなります。

その背景にあるのが、南部のメコンデルタです。メコン川の下流に広がる平野で、米の一大産地であると同時に、ココナッツの栽培もさかんです。なかでもベンチェー省は「ココナッツの里」と呼ばれ、ココナッツキャンディなどの名産品で知られています。

米粉とココナッツミルクを使うバイン・ザー・ロンも、こうした南部の食材から生まれた菓子です。ホーチミンの市場では、バイン・ザー・ロンと並んで、ココナッツを使ったさまざまな蒸し菓子が売られています。

一方、北部のハノイでは、緑米(コム)を使った菓子や、もち米の菓子が好まれます。同じベトナムの菓子でも、どの地域のものかを意識して食べると、土地ごとの食材の違いが見えてきます。

ベトナムで食べるなら

バイン・ザー・ロンは、市場の菓子売り場や路上の屋台でよく売られています。いくつかの伝統菓子を少しずつ詰め合わせて売っている店もあり、食べ比べに向いています。

作ったその日に食べるのがいちばんです。冷蔵庫に入れるとでんぷんが固くなり、弾力が失われます。固くなったものは、軽く蒸すか電子レンジで少し温めると、やわらかさが戻ります。

旅行中に屋台で買うときは、ベトナムの通貨ドンの桁の大きさに注意が必要です。支払いの目安をつかむには海外旅行で使える為替計算アプリが役に立ちます。

ベトナム語で注文するときは、指さしで「カイ・ナイ(cái này、これ)」と伝えれば通じます。店によって1切れ単位やパック単位で売られているので、先に値段を確かめてから買うと安心です。

バイン・ザー・ロンは、層を1枚ずつはがしながら食べるのも楽しみ方のひとつです。層どうしの境目が少しだけ弱いので、指でつまむときれいにはがれます。

家で作るときのコツ

きれいに仕上げるポイント

  • 緑豆は皮なしのものを使い、よく蒸してなめらかにつぶす
  • 生地は目の細かいざるでこし、ダマをなくす
  • 1層ごとに、表面が固まるまで蒸してから次を流す
  • 完全に冷めてから切る。油を塗った包丁を使うと切りやすい

パンダンの葉が手に入らない場合は、アジア食材店で売られているパンダンエキスで代用できます。蒸し器の水滴が生地に落ちると表面がくぼむので、ふたを布で包んでおくと防げます。

熱いうちに切ると層がくずれます。粗熱が取れて、全体が落ち着いてから切り分けてください。

香りを決めるパンダンの葉

パンダンは、タコノキ科の植物で、細長い葉を持ちます。東南アジアや南アジアで広く栽培され、葉を煮出したり、すりつぶして汁を絞ったりして、菓子やご飯の香りづけに使います。

香りの主な成分は、炊いた香り米と同じ種類の物質です。そのため、パンダンの香りは、どこか炊きたてのご飯を思わせる甘い香りがします。タイではパンダンの葉でご飯を炊いたり、鶏肉を包んで揚げたりと、料理にも使われます。

パンダンの緑色は、葉に含まれる葉緑素によるものです。天然の色なので、市販の菓子のような鮮やかな緑ではなく、少し落ち着いた色になります。店によっては、色を濃く見せるために食用色素を加えることもあります。

タピオカ粉とキャッサバ

タピオカ粉の原料は、キャッサバというイモです。南アメリカ原産の作物で、今ではタイやベトナム、インドネシアなど東南アジアでも大量に栽培されています。ベトナムは、キャッサバから作るでんぷんの主要な輸出国のひとつです。

キャッサバの根には、生のままでは毒になる成分が含まれています。そのため、皮をむいて水にさらし、でんぷんを取り出す加工が欠かせません。タピオカドリンクの粒も、同じタピオカ粉を丸めて作ったものです。

タピオカ粉は、じゃがいものでんぷん(片栗粉)に比べて、加熱したときの粘りと弾力が強いのが特徴です。バイン・ザー・ロンのもちもちした食感は、この性質から生まれます。

日本のういろうとの違い

バイン・ザー・ロンういろう
主な粉タピオカ粉と米粉米粉(もち粉やわらび粉を使うものも)
水分ココナッツミルク水
見た目緑と黄色の層単色が基本
作り方1層ずつ蒸し重ねるまとめて蒸す

日本人がバイン・ザー・ロンを食べると、ういろうに似ていると感じることが多いようです。どちらも粉を蒸して作る菓子で、もっちりとした食感が共通しています。違いは、ココナッツミルクのコクと、タピオカ粉による強い弾力です。

名前は豚の皮、中身は緑豆とココナッツの層

バイン・ザー・ロンは、タピオカ粉と米粉、ココナッツミルク、緑豆、パンダンで作るベトナムの蒸し菓子です。「豚の皮」という名前は見た目と食感のたとえで、豚は使いません。生地を1層ずつ蒸し重ねる手間が、あの縞模様と弾力を生みます。

アジアの甘いものについては韓国のかき氷「ピンス」と日本のかき氷の違いでも扱っています。

出典:Wikipedia「Bánh da lợn」「Khanom chan」「Kue lapis」「Bánh chưng」

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