「猫島」と呼ばれる場所には、性格の異なる二種類があります。
ひとつは、島に暮らす猫の数が人口に迫る、あるいは上回る島。もうひとつは、保護施設が置かれていて、そこに多数の猫が保護されている島です。
訪れる前にこの区別を知っておくと、期待と実際のずれが減ります。前者は日常の風景の中に猫がいる場所、後者は施設を訪問する体験になります。
二つのタイプ
- 「猫が多い島」:住民の生活圏に猫が定着している
- 「保護施設のある島」:施設内で保護猫が暮らしている
- 前者は餌やりや接触に厳しいルールがある場合が多い
- 後者は開館時間と寄付の仕組みがある

1.
佐柳島(日本・香川県)
瀬戸内海に浮かぶ小さな島です。多度津港からフェリーで約50分。
特徴として知られるのが、猫が石垣や堤防の上で跳ぶ姿です。島の地形と猫の動線が重なった結果で、写真を目的に訪れる人が多い。
島には商店がほとんどなく、食事や飲み物は事前に用意して渡る必要があります。フェリーの本数も限られるため、日帰りの場合は帰りの便を先に確認してください。
日本にはほかにも猫で知られる島があります。宮城県の田代島、福岡県の相島、愛媛県の青島。いずれも住民の生活の場であり、観光施設ではありません。
2.
シロス島(ギリシャ)
キクラデス諸島の島で、アテネからフェリーで数時間の距離にあります。
ギリシャ全体に共通することですが、街中に猫がいるのは日常の風景です。温暖な気候と屋外での生活様式が、猫が定着しやすい環境を作っています。
シロス島には猫の保護活動を行う施設もあり、多数の猫を保護しています。訪問を希望する場合は、事前の連絡が必要な場合があるため確認してください。
観光地として整備された「猫島」ではなく、地域の生活と保護活動が並存している場所として捉えるほうが実態に近い。

3.
シチリア島(イタリア)
シチリアは面積2万5,000平方キロを超える大きな島で、島全体が猫の島というわけではありません。
ただしイタリアには、猫に関する独特の制度があります。一定の場所に定着した猫の集団が法的に保護される仕組みがあり、世話をする人が公的に認められている地域があります。
ローマのトッレ・アルジェンティーナ遺跡の猫たちが有名ですが、シチリアの各都市でも遺跡や広場に猫が定着している光景が見られます。
つまりここは「猫島」ではなく、「猫が街の一部として扱われている文化圏」と理解するのが正確です。
4.
ジュンダ島(トルコ)
エーゲ海に面したアイワルク沖の島で、橋で本土とつながっています。
トルコは猫との距離が近い国として知られます。イスタンブールの街並みと猫を描いたドキュメンタリー映画が国際的に注目されたこともあり、猫を目的に訪れる旅行者が増えました。
ジュンダ島でも、石畳の旧市街に猫が定着している光景が見られます。ただし観光施設としての「猫島」ではなく、住民の生活圏です。
トルコでは水や餌を置く習慣が地域に根づいている場所もありますが、旅行者が勝手に餌を与えることは別の問題です。現地のやり方を観察してから判断してください。

5.
ラナイ島(ハワイ・アメリカ)
ここは性格がはっきり違います。島に野良猫が溢れているのではなく、保護施設があるのです。
ラナイ・キャット・サンクチュアリは、700匹以上の保護猫が暮らす屋外型の施設です。在来の鳥類を保護する目的もあり、島に生息していた猫を保護して管理下で暮らさせる仕組みとして運営されています。
入場は無料ですが、運営は寄付によって支えられています。訪問するなら寄付を前提に考えるのが妥当です。
開館時間が決まっているため、事前に確認してから向かってください。ラナイ島自体がマウイ島からフェリーまたは小型機でのアクセスとなるため、移動の計画も必要です。
訪問時の
マナー
どのタイプの場所でも、共通して守るべきことがあります。
猫のいる場所での基本
- 勝手に餌を与えない(ルールがある場所が多い)
- 追いかけない、抱き上げない
- フラッシュを使って撮影しない
- ゴミを持ち帰る
- 住民の生活圏であることを忘れない
餌やりは最も注意が必要な項目です。島や地域によっては、健康管理と個体数管理のために餌の種類と量が決められています。旅行者が善意で与えた食べ物が、体調を崩す原因になることがある。
また、猫が集まる場所の多くは住民の生活の場です。私有地に入る、住宅を撮影する、道を塞ぐ。こうした行為が積み重なって、観光客の立ち入りが制限された例もあります。
保護施設の場合は、施設のルールに従ってください。触れてよい範囲、撮影の可否、滞在時間の目安。いずれも掲示されています。
訪問前に
確認すること
猫がいる場所は、天候と季節で見え方が変わります。
暑い時期の日中は、猫が日陰に入って姿が見えないことがあります。朝夕のほうが活動的です。
また、島へのアクセスは天候に左右されます。フェリーが欠航すれば渡れません。日帰りの予定なら、欠航時の代替案も考えておく必要があります。
猫の数は一定ではありません。個体数の管理が行われている場所では、以前より減っていることもあります。数を期待して訪れると、落差を感じることになります。
日本国内の
選択肢
海外まで行かなくても、国内に候補はあります。
宮城県の田代島は、猫に関する神社があることでも知られ、国内では最も名前の挙がる島のひとつです。石巻港からフェリーでアクセスします。
福岡県の相島は、玄界灘に浮かぶ島で、新宮漁港から渡船で約20分。距離が近く、日帰りしやすい立地です。
愛媛県の青島は、住民が非常に少なく猫の数が上回る島として知られてきました。ただし受け入れ体制の事情から、訪問に制限が設けられた時期もあります。訪れる前に現在の状況を確認してください。
いずれの島も、観光施設ではなく住民の生活の場です。商店やトイレが限られている島も多く、飲食物の持参と持ち帰りが前提になります。
訪問者の増加によって、猫の健康や住民の生活に影響が出た例が各地で報告されています。訪れる側の振る舞いが、その場所が開かれ続けるかどうかを左右します。
観光地ではなく誰かの生活の場
猫島と呼ばれる場所は、猫が地域に定着している島と、保護施設が置かれている島に分かれます。ラナイ島は後者で、700匹以上の保護猫が施設で暮らしています。
どちらを訪れる場合も、そこが観光施設ではなく生活や保護活動の場であることが前提です。餌を与えず、追いかけず、ルールを確認する。猫は観光資源ではなく、そこに住んでいるだけです。
出典:Lanai Cat Sanctuary の公開情報ほか





