韓国のかき氷「ピンス」と日本のかき氷の違い|ミルク氷の食感と、朝鮮時代から続く氷の歴史

韓国のかき氷「ピンス(빙수)」は、氷そのものが違います。日本のかき氷は水を凍らせた氷を削り、シロップをかけて食べるのが基本です。一方、今の韓国で主流のピンスは、牛乳を凍らせた氷を粉雪のように細かく削ります。口に入れた瞬間に溶ける、ふわふわの食感が特徴です。

ピンスは、夏だけでなく一年中カフェで食べられる、韓国を代表するデザートになりました。この記事では、ピンスと日本のかき氷の違い、代表的な種類、朝鮮時代にさかのぼる氷の歴史、そして韓国で食べるときのポイントをまとめます。

ピンスの基本

  • ピンスは韓国のかき氷。牛乳を凍らせたミルク氷を使うものが主流
  • 代表は小豆をのせた「パッピンス」
  • 朝鮮時代には「石氷庫」で冬の氷を夏まで保存していた
  • 韓国ではカフェで一年中食べられ、複数人で分け合うのが一般的

ピンスと日本のかき氷の違い

ピンス
韓国のピンス日本のかき氷
氷牛乳を凍らせたミルク氷が主流水を凍らせた氷
食感粉雪のようにふわふわ、すぐ溶けるシャリシャリ、またはふわふわ
味つけ氷自体に甘みと乳の風味があるシロップで味をつける
トッピング小豆、餅、果物、きな粉などを多くのせる練乳や果物のソースが中心
食べる時期一年中主に夏

いちばん大きな違いは氷です。ミルク氷は、氷そのものに甘みと乳の風味があるので、シロップをかけなくても味がついています。削ると粉雪のように細かくなり、口に入れるとすぐに溶けます。

トッピングの量も違います。ピンスは、小豆や餅、果物、ナッツなどを氷の上にたっぷりのせ、器も大きいのが一般的です。ひとりで食べるより、2〜3人で分け合うのが韓国での普通の食べ方です。

氷の質で変わる食感

ミルク氷のピンスがふわふわになるのは、牛乳に含まれる脂肪やたんぱく質、糖分が、氷の結晶を小さく保つためです。水だけを凍らせた氷は硬く、細かく削っても粒がしっかり残ります。牛乳を凍らせた氷はやわらかく、削ると粉雪のような細かい粒になります。

韓国のピンス専門店では、牛乳を凍らせながら薄く削り出す専用の機械を使う店が多くあります。削った氷を器にふんわり盛り上げるには技術がいり、店ごとに氷の食感に違いが出ます。

ピンスの器は、底の浅い大きな皿や、金属製の丸い器が使われることが多く、たっぷりの氷とトッピングを盛り付けても崩れにくいようになっています。

代表的なピンスの種類

よく見かけるピンス

  • パッピンス(팥빙수):甘く煮た小豆をのせた定番
  • インジョルミピンス:きな粉と、きな粉をまぶした餅をのせる
  • マンゴーピンス:生のマンゴーをたっぷりのせる
  • いちごピンス:冬から春にかけて人気の季節の味

最も伝統的なのが、小豆をのせたパッピンスです。韓国語の「パッ(팥)」は小豆を意味します。甘く煮た小豆に、小さな餅や練乳を添えるのが定番の組み合わせです。

インジョルミピンスは、韓国の餅菓子インジョルミにちなんだピンスです。きな粉をたっぷりかけ、きな粉をまぶした餅をのせます。香ばしいきな粉とミルク氷の組み合わせは、日本人にもなじみやすい味です。

季節の果物を使ったピンスも人気があります。夏はマンゴー、冬から春はいちご。ホテルのラウンジでは、高級なマンゴーをまるごと使ったピンスが夏の名物になっていて、1杯10万ウォンを超えることもあります。

朝鮮時代の氷の蔵「石氷庫」

ピンス

韓国で夏に氷を楽しむ習慣は、古くからありました。朝鮮時代には、冬に川で切り出した氷を「石氷庫(ソッピンゴ)」と呼ばれる石造りの蔵に保存し、夏まで使っていました。

石氷庫は、半地下の構造と石の壁で外の熱を遮り、氷を長く保つよう工夫された施設です。慶州(キョンジュ)に残る石氷庫は18世紀に造られたもので、今も当時の姿を見ることができます。ソウルには「西氷庫洞(ソビンゴドン)」という地名が残り、かつて氷の蔵があった名残をとどめています。

夏の氷は貴重なもので、王族や高官に分け与えられていました。砕いた氷に果物を添えて食べたという記録もあり、これが韓国の氷菓の始まりのひとつとされています。

慶州の石氷庫は、韓国の宝物(国の文化財)に指定されています。新羅の古都として知られる慶州の遺跡巡りの途中で立ち寄れる場所にあり、かつて夏の氷がどれほど貴重だったかを、建物の造りから感じ取ることができます。

パッピンスから、ミルク氷のピンスへ

小豆をのせたかき氷が広く食べられるようになったのは、20世紀に入ってからです。日本統治時代に、日本のかき氷の文化が伝わった影響もあると考えられています。

朝鮮戦争のあとには、練乳やシロップなど、新しい材料が入ってきました。街の喫茶店や屋台で、削った氷に小豆や練乳をのせたパッピンスが夏の定番になっていきます。当時の氷は水を凍らせたもので、今の日本のかき氷に近い食感でした。

大きく変わったのは2010年代です。牛乳を凍らせたミルク氷を、専用の機械で粉雪のように削るピンスが広まり、専門のデザートカフェが全国に増えました。この「雪のようなピンス」の人気で、ピンスは夏だけのものではなく、一年中食べられるデザートになりました。

ピンスの値段の目安

韓国のデザートカフェのピンスは、1杯あたり1万ウォン前後からが目安です。2〜3人で分けることを考えると、ひとりあたりの負担はそれほど大きくありません。一方で、ホテルのラウンジのピンスは、使う果物によって大きく値段が上がり、店によって値段の幅がとても広いのが特徴です。

ホテルのピンスは、器や盛り付けにも工夫が凝らされています。旬の果物を一粒ずつ並べ、別の器で練乳やソースを添えるなど、高級なデザートとしての見せ方をしています。夏にソウルを訪れるなら、話のたねに一度味わってみるのも悪くありません。

韓国でピンスを食べるなら

ピンス

ソウルの街には、ピンス専門のデザートカフェがあちこちにあります。注文すると、大きな器に山盛りのピンスが運ばれてきます。1杯を2〜3人で分けるくらいの量があるので、ひとりのときは小さいサイズがあるかを確かめてから注文すると安心です。

韓国のカフェは、注文と支払いを先にカウンターで済ませる方式が一般的です。できあがると、呼び出しベルや番号で知らされるので、自分で受け取りに行きます。セルフサービスの店が多いことを覚えておくと戸惑いません。

運ばれてきたら、まず全体をよく混ぜて食べるのが韓国流です。上にのった小豆やきな粉、練乳と下のミルク氷を混ぜ合わせると、どこを食べても同じ味になります。ミルク氷は溶けるのが早いので、写真を撮ったら早めに食べ始めましょう。

冬の韓国は寒さが厳しく、ソウルでは氷点下の日も珍しくありません。それでもピンスの店がにぎわうのは、暖かい室内で冷たいデザートを楽しむ習慣が根づいているからです。冬はいちごのピンスを食べる人も多くいます。

ピンスの注文で使える韓国語

覚えておくと便利な言葉

  • 주세요(チュセヨ):〜をください
  • 하나 / 둘(ハナ / トゥル):ひとつ / ふたつ
  • 여기서 먹을게요(ヨギソ モグルケヨ):ここで食べます
  • 포장해 주세요(ポジャンヘ ジュセヨ):持ち帰りでお願いします

メニューを指さして「パッピンス ハナ チュセヨ」と言えば、パッピンスをひとつ注文できます。多くのカフェでは、店内で食べるか持ち帰るかを聞かれるので、「ヨギソ モグルケヨ」と答えれば店内で食べられます。

ソウルの観光地では日本語や英語のメニューを置いている店も多く、韓国語が話せなくても困ることはあまりありません。それでも、ひとことでも韓国語で注文すると、店員の対応がやわらかくなることがあります。

韓国の夏の食べもの

料理特徴
サムゲタン(参鶏湯)鶏に高麗人参や餅米を詰めて煮込んだスープ。暑い日にあえて熱いものを食べる
冷麺(ネンミョン)冷たいスープのそば。水冷麺と、辛いたれで和えるビビン冷麺がある
コングクス豆乳の冷たいスープに麺を入れた、夏の麺料理

韓国には、夏の最も暑い時期を3つに分けた「伏日(ポンナル)」と呼ばれる日があります。この日にサムゲタンを食べる習慣があり、店の前に長い行列ができます。熱いもので熱を制する「以熱治熱」という考え方で、冷たいピンスとは逆の暑さ対策です。

伏日は、夏至のあとの暦で決まる3つの日で、初伏、中伏、末伏と呼ばれ、毎年7月から8月にかけてやってきます。冷たいものでからだを冷やすピンスと、熱いスープで汗をかくサムゲタン。どちらも、蒸し暑い韓国の夏を乗り切るための、暮らしの知恵です。

日本で楽しむなら

日本でも、韓国風のピンスを出すカフェが増えてきました。新大久保など韓国料理店の多い街では、ミルク氷のピンスを手軽に味わえます。

家庭で作るなら、牛乳に練乳を少し混ぜて製氷皿で凍らせ、かき氷器で削るとミルク氷に近い食感になります。ふわふわに削るには、氷を冷凍庫から出して数分置き、表面が少しやわらかくなってから削るのがコツです。市販のゆで小豆やきな粉、白玉を使えば、パッピンスやインジョルミピンスに近い味を手軽に再現できます。

日本のかき氷も、ここ十数年で大きく変わりました。天然の氷を使った店や、氷をごく薄く削ってふわふわに仕上げる店が増え、季節を問わず行列のできる専門店もあります。水の氷を使う日本式と、ミルク氷を使う韓国式。どちらも氷を主役にしたデザートとして進化を続けています。

氷そのものに味があるのが、韓国のピンス

韓国のピンスと日本のかき氷の違いは、氷にあります。牛乳を凍らせたミルク氷を粉雪のように削り、小豆や餅、果物をたっぷりのせる。シロップで味をつける日本のかき氷とは、発想が逆なのです。

朝鮮時代の石氷庫から、2010年代のミルク氷のカフェまで。ピンスには、韓国の人々が夏の氷を楽しんできた長い歴史が重なっています。韓国での暮らしや旅については非英語圏で就労しやすいワーホリ先4選でも扱っています。

出典:Wikipedia「Bingsu」「Seobinggo-dong」

Filed in

Which way?

留学とワーホリ、自分に合うのはどちらか。

診断してみる →