TasteAtlas(テイストアトラス)は、世界の郷土料理と食材を地図の上に並べたデータベースです。名前は「味覚の地図帳」の意味。2025/26年版のランキングでは、1万1,781品の料理に寄せられた45万3,720件の有効な評価が集計されました。
運営はクロアチアの会社で、ジャーナリストのマティヤ・バビッチが2015年に立ち上げ、3年あまりの準備を経て2018年末に公開しました。日本語のガイドブックに載らない料理を探すときに役立つ一方、使い方を誤ると当てにならない情報源にもなります。強い場面と弱い場面を分けて見ていきます。
※この記事は同サイトのプロモーションとは関係ありません。
先に結論
- 強い場面:渡航先で「何を食べるか」を決める段階
- 弱い場面:具体的な店を決める段階(営業状況が古いことがある)
- ランキングは評価の平均点で決まり、上位の差はごくわずか
- 料理名を現地語で控え、Google Mapsなど現地で強いサービスで店を探すのが実用的

クロアチア発のサイトができるまで
TasteAtlasをつくったマティヤ・バビッチは、クロアチアのニュースサイト「Index.hr」の創業者として知られるジャーナリストです。2015年に開発を始め、2018年初めの試作段階では約5,000品を掲載していました。同年末の正式公開後、ウェブデザインの国際賞Awwwardsで佳作に選ばれています。
掲載する料理や店は、料理の専門家や評論家の推薦、文献での言及、EUの原産地呼称やユネスコ無形文化遺産といった認証をもとに選んでいると説明されています。アイルランドや米カンザス州では、世界の食文化を学ぶ教材としても紹介されてきました。
1.地図から料理をたどれる
このサイトの中心機能は地図です。国や地域を選ぶと、その土地の料理と食材がピンで表示されます。行政区画ではなく食文化の分布で見られるため、「同じ国でも北と南で主食が違う」といった構造が目に入ります。
一般的なグルメサイトは店から入りますが、ここは料理から入る。旅の計画段階では、この順序のほうが役に立ちます。行き先の都市が決まった時点で地図を開けば、その周辺で生まれた料理が一覧になり、「この町に行くならこれ」という候補がすぐに集まります。
食材の項目も充実しています。チーズ、ハム、オリーブオイル、ワインのように、産地の名前がついた食材が多く載っていて、EUの地理的表示(GI)など認証の有無も確認できます。市場やスーパーで買い物をするときの下調べにも使えます。
2.料理ごとの解説が付いている
各項目には、発祥地、歴史的な背景、調理法、食べ方、合わせる飲み物の提案が書かれています。
注文の場面で違いが出ます。メニューに並ぶ現地語の料理名が何を指すか分かっていれば、選択がまったく変わる。似た名前の料理の違いも説明されているため、取り違えを避けられます。
たとえばペルー料理なら、生の魚をライムで締めたセビーチェ、牛肉と野菜を炒めてフライドポテトと合わせるロモ・サルタード、といった定番がまとまっています。現地のメニューで名前を見たとき、それが冷たい前菜なのか温かい主菜なのかが分かるだけで、注文の失敗はかなり減ります。

3.ランキングは「知名度込みの人気投票」として読む
TasteAtlasは毎年、料理や国の人気ランキングを発表していて、日本のニュースでもときどき取り上げられます。2025/26年版の「世界の料理(国別)ベスト100」は、1万8,912品に寄せられた59万228件の有効な評価をもとにしています。1位はイタリアで、日本はトルコと並んで6位でした。
| 順位 | 国 | 評価 |
|---|---|---|
| 1 | イタリア | 4.64 |
| 2 | ギリシャ | 4.60 |
| 3 | ペルー | 4.54 |
| 4 | ポルトガル | 4.53 |
| 5 | スペイン | 4.53 |
| 6 | 日本 | 4.49 |
| 6 | トルコ | 4.49 |
| 8 | 中国 | 4.48 |
| 8 | フランス | 4.48 |
| 8 | インドネシア | 4.48 |
表を見ると分かるとおり、1位と10位の差は0.16しかありません。5段階評価で小数点第2位を争っている状態です。順位が1つ2つ違っても、料理の質の差を示しているとは言えません。
ランキングはユーザーの評価に基づくため、評価の数が集まりやすい有名な料理ほど有利になります。ある料理が上位に来ないことは、その料理が劣ることを意味しません。国際的に知られているかどうかの指標に近いものです。複数の国が発祥を主張する料理や、地域ごとに呼び名が違う料理では、どの国に割り振るかをめぐって議論が起きることもあります。
旅の計画に使うなら、順位ではなく「その地域にどんな料理があるか」という一覧のほうを見てください。
順位は毎年入れ替わる
国別ランキングの順位は、年によってかなり動きます。2023/24年版ではイタリアが1位、日本が2位、ギリシャが3位でした。翌2024/25年版ではギリシャが1位になり、イタリアは首位を明け渡しています。2025/26年版ではイタリアが1位に戻り、日本は6位でした。
| 年版 | 1位 | 日本の順位 |
|---|---|---|
| 2023/24 | イタリア | 2位 |
| 2024/25 | ギリシャ | — |
| 2025/26 | イタリア | 6位(トルコと同点) |
日本料理の中身が2年で大きく変わったわけではありません。評価を寄せる人の顔ぶれや、評価が集まった料理の組み合わせが変われば、平均点は動きます。ニュースで「日本料理が世界○位」と見かけたら、前の年と比べて何が動いたのかを確かめると、数字との付き合い方が分かってきます。
デザートのランキングも同じ見方ができます。2025/26年版の「世界のデザートベスト100」は2,274品・9万7,422件の評価にもとづき、1位はトルコ南部アンタキヤのキュネフェ(4.51)、2位はイギリスのクロテッドクリーム・アイスクリーム(4.49)でした。上位60位までに日本の菓子は入っていません。和菓子は海外で評価の数そのものが集まりにくく、平均点の勝負に乗りにくいという事情もあります。
ヨーロッパの伝統菓子については、TOKORISTでもザッハトルテなどを個別に紹介しています。ランキングの外にも、土地に根づいた菓子はたくさんあります。
都市と地域のランキングは「食べ歩きの行き先選び」に使える
料理や国のランキングより旅行に直結するのが、都市と地域のランキングです。2025/26年版の「食の都市ベスト100」は、データベースにある1万8,828都市を対象に、その都市でよく出される郷土料理・国民食の評価の平均で順位をつけています。店の評価ではなく、「その町で食べられる料理」の評価です。
| 順位 | 都市 | 評価 |
|---|---|---|
| 1 | ナポリ(イタリア) | 4.99 |
| 2 | ミラノ(イタリア) | 4.99 |
| 3 | ボローニャ(イタリア) | 4.98 |
| 4 | フィレンツェ(イタリア) | 4.89 |
| 5 | ムンバイ(インド) | 4.78 |
| 7 | パリ(フランス) | 4.77 |
| 10 | リマ(ペルー) | 4.74 |
| 11 | 大阪(日本) | 4.74 |
| 14 | 京都(日本) | 4.70 |
| 26 | 東京(日本) | 4.60 |
上位10都市のうち6都市がイタリアです。これは、イタリア料理に評価の数が多く集まっていることの裏返しでもあります。日本では大阪が11位、京都が14位、東京が26位でした。東京が大阪や京都より下にあるのは、東京の店の質が低いという意味ではありません。「その都市を代表する料理」の評価で比べているため、お好み焼きやたこ焼きのように土地と結びついた料理がある都市ほど有利になります。
地域ランキングでは、1位がイタリアのカンパニア州(4.47)、2位がエミリア=ロマーニャ州(4.45)、3位がギリシャのクレタ島(4.42)。日本からは関西地方が22位(4.28)、関東地方が38位(4.21)に入っています。
| 順位 | 地域 | 評価 |
|---|---|---|
| 1 | カンパニア(イタリア) | 4.47 |
| 2 | エミリア=ロマーニャ(イタリア) | 4.45 |
| 3 | クレタ(ギリシャ) | 4.42 |
| 9 | アレンテージョ(ポルトガル) | 4.40 |
| 22 | 関西地方(日本) | 4.28 |
| 38 | 関東地方(日本) | 4.21 |
使い方としては、「次の旅行で食事を楽しみたいが、行き先がまだ決まっていない」という段階で眺めるのが向いています。たとえばポルトガルに行くならリスボンだけでなく、9位のアレンテージョ地方まで足を延ばす価値があるかを検討する、といった使い方です。順位そのものより、ふだん名前を聞かない地域が上位に入っていることに気づけるのが、このランキングの価値です。
日本の料理はどう載っているか
日本人にとって、TasteAtlasの精度を測りやすいのが日本料理のページです。2025/26年版の「世界の料理ベスト100」では、横浜家系ラーメンが22位(4.43)、マグロの握りずしが24位(4.42)、豚骨ラーメンが37位(4.39)に入りました。1位はパラグアイのスープ、ボリボリ(4.64)です。ラーメンが「横浜家系」と「豚骨」に分かれて別々に順位がついているように、TasteAtlasは同じ料理でも地域や流派ごとに項目を分けて扱います。旅行先の料理を調べるときも、国名だけでなく地方名まで絞って見ると、候補が具体的になります。
| 順位 | 料理 | 国・地域 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 1 | ボリボリ(肉団子入りのスープ) | パラグアイ | 4.64 |
| 2 | ピッツァ・ナポレターナ | イタリア | 4.58 |
| 22 | 横浜家系ラーメン | 日本 | 4.43 |
| 24 | マグロの握りずし | 日本 | 4.42 |
| 37 | 豚骨ラーメン | 日本 | 4.39 |
自分がよく知っている国の料理ページを先に読んでおくと、説明の細かさや、どんな料理が「代表」として選ばれているかの癖が分かります。そのうえで知らない国のページを読めば、どこまで信用していいかの見当がつきます。
4.店の情報は裏を取る
レストラン情報も約9,000軒が掲載されていますが、営業時間や現在の営業状況までは追いきれていません。閉店した店が残っている場合もあります。
実用的な使い方は、ここで料理名と店名の候補を拾い、Google Mapsなど更新の速いサービスで現況を確認するという二段構えです。ただし、Google Mapsがどこでも最強というわけではありません。国によっては、地元で使われているサービスのほうが情報が新しく、口コミも多くなります。
| 国・地域 | 料理名を拾ったあとに使いたいサービス | 補足 |
|---|---|---|
| 韓国 | NAVERマップ、カカオマップ | Google Mapsは徒歩や車の経路案内が限られる |
| 中国本土 | 大衆点評(Dianping)、高徳地図(Amap) | Googleのサービスは基本的に使えない |
| フランス・イタリア・スペインなど | TheFork、Google Maps | TheForkは予約と割引が中心 |
| アメリカ | Yelp、Google Maps | 口コミの数が多い |
| 日本 | 食べログ、Google Maps | 日本の食べ物を外国人に紹介するときに使える |
Google Mapsで旅行前にしておきたい設定は、海外旅行前にGoogleマップでやっておく8つの準備にまとめています。
使い方の手順
実際の手順
- 渡航先の国または都市を地図で開く
- その土地の料理を一覧で眺め、気になるものを3〜4つ控える
- 料理名(できれば現地語表記)をメモする
- その料理名でGoogle Mapsや現地のサービスを検索し、提供している店を探す
- 営業時間と直近のレビューを確認してから向かう
料理名を現地語で控えておくのが要点です。英語名や日本語のカタカナ表記では、現地の検索で引っかからないことがあります。ジョージアのチーズ入りパンなら「ハチャプリ」ではなく「ხაჭაპური」、ベトナムのつけ麺なら「ブンチャー」ではなく「bún chả」。現地語の表記をスマートフォンのメモに貼っておけば、店員に画面を見せて注文することもできます。
ジョージアのように、料理だけでなくワインにも独自の伝統がある国なら、ワインの産地もあわせて調べると、食事の組み立てが楽になります。
例:ペルーのリマで何を食べるか決める
手順を具体的な都市で試してみます。リマは2025/26年版の「食の都市」で10位(4.74)、ペルー料理は国別で3位の常連です。地図でリマ周辺を開くと、海沿いの町らしく魚介の料理が多く並びます。
| 料理名(現地表記) | どんな料理か | メモしておくこと |
|---|---|---|
| セビーチェ(ceviche) | 生の魚介をライムと唐辛子で締めた冷たい料理 | 専門店(cevichería)は昼営業が中心の店が多い |
| ロモ・サルタード(lomo saltado) | 牛肉、玉ねぎ、トマトの炒め物にフライドポテトとごはん | 中国系移民の料理の影響を受けた一皿 |
| アンティクーチョ(anticuchos) | 牛の心臓の串焼き | 屋台や夕方以降の店で出ることが多い |
| アヒ・デ・ガジーナ(ají de gallina) | 黄色い唐辛子のソースで煮た鶏肉 | 辛さは控えめで食べやすい |
セビーチェは2023年、その調理と食の習慣がユネスコの無形文化遺産に登録されました。TasteAtlasの料理ページにもこうした背景が書かれているので、「なぜこの料理が名物なのか」まで分かったうえで店を選べます。料理名を4つ控えたら、あとはGoogle Mapsで「cevichería」と検索し、営業時間と最新の口コミを確認するだけです。
ほかの下調べサイトとの使い分け
TasteAtlasが得意なのは「料理の一覧」です。店のランキングや、実際に行った人の最新の感想は、ほかのサービスのほうが強い。役割を分けておけば、調べものの時間を減らせます。
| 段階 | 向いているサービス | TasteAtlasの役割 |
|---|---|---|
| 行き先の食文化をつかむ | TasteAtlas | 中心になる |
| 料理名を決める | TasteAtlas | 中心になる |
| 店を選ぶ | Google Maps、現地の口コミサービス | 候補の店名を出す程度 |
| 営業状況を確かめる | Google Maps、店の公式SNS | 使わない |
| 帰国時のおみやげ選び | TasteAtlasの食材ページ | 産地や認証の確認に使える |
旅先の食事で外さないための下調べ全般は、旅先の食を外さないための4つのサイトで比較しています。食材をおみやげにする場合は、日本に持ち込めない食べ物も先に確認しておいてください。肉製品は原則として持ち込めません。
何を食べるかはTasteAtlasで、どこで食べるかは別のサービスで
TasteAtlasは「何を食べるか」を決めるためのサイトです。「どこで食べるか」を決めるサイトではありません。ランキングの順位も、料理の優劣ではなく知名度込みの人気として読むのが正確です。
この線引きさえ守れば、旅先の食事で当たりを引く確率は上がります。次の渡航先が決まったら、まず地図を開いて料理名を3つ拾ってみてください。
出典:TasteAtlas Awards 25/26「100 Best Cuisines」「100 Best Dishes」「100 Best Food Cities」「Best Food Regions」「100 Best Desserts」、Wikipedia「TasteAtlas」、VnExpress International(2026年1月1日)、Greek City Times(2024年3月1日、2025年12月7日)、Time Out(2024年12月)、UNESCO無形文化遺産リスト





