「カワイイ」はなぜ生まれ、世界に広がったのか|語源から海外での受容まで

「かわいい」の語源は「かはゆし」、さらに遡ると「顔映ゆし」にたどり着きます。原義は、恥ずかしい。

いまの用法からは想像がつきません。「はゆし」はまぶしいという意味で、顔を合わせるとまぶしく感じることから、きまりが悪い、恥ずかしいという意味になったとされています。

意味の変遷

  • 語源は「顔映ゆし」。原義は「恥ずかしい」
  • 「見るに忍びない」から「気の毒・不憫」へ
  • 江戸時代に「愛らしい」の意味が定着
  • 1990年代以降、kawaiiとして海外へ

1.
意味は三段階で
移動した

語の意味は、三つの段階を経て現在に至ります。

第一段階は「恥ずかしい」。顔を合わせるとまぶしい、照れくさいという感覚です。

第二段階は「気の毒、不憫」。見るに忍びない、という含みから転じたとされます。この段階の名残は「かわいそう」という語に残っています。語形が近いのは偶然ではありません。

第三段階が「愛らしい」。江戸時代に、愛すべき小さいものを指す意味で使われるようになりました。

興味深いのは、第二段階の「不憫」が完全には消えていないことです。現代の「かわいい」にも、守りたくなる、放っておけないという含みが残っている。この点が英語の cute とは微妙にずれます。

2.
「うつくし」との
違い

古語で愛らしさを表す語としては、「うつくし」もありました。『枕草子』の有名な段で、小さきものを列挙する際に使われている語です。

「うつくし」は、小さく整ったものへの肯定的な感情を直接表します。一方「かはゆし」は、前述のとおり気の毒という経路を通ってきた語です。

現代語の「美しい」は「うつくし」の系統を継ぎながら、意味が別の方向へ移りました。結果として、愛らしさを表す役割は「かわいい」が引き受けることになった。

3.
戦後の
拡大

現代的な「カワイイ」の広がりは、戦後の消費文化と結びついています。

1970年代の少女文化、丸みを帯びた手書き文字の流行、キャラクター商品の普及。この時期に、かわいいものを好むことが一つの美意識として確立しました。

1974年に登場したキャラクターに代表されるサンリオの商品群は、この美意識を形にした商品として流通し、後に海外展開の中心にもなります。

1990年代には、かわいいという評価軸が対象を選ばなくなります。人、物、動作、状況。何にでも適用できる万能の形容詞として使われるようになりました。

4.
海外への
広がり方

kawaiiが国際的に使われるようになった経路は、いくつかあります。

第一に、アニメと漫画です。翻訳される過程で、cute では置き換えられない語として原語のまま残されることがありました。

第二に、キャラクター商品の輸出。商品そのものが美意識を伝える媒体になりました。

第三に、2000年代以降のファッションと音楽。原宿を中心とした街の文化が、映像を通じて海外に届きました。

第四に、インターネットです。画像共有の仕組みが、言語の壁を越えて視覚的な美意識を伝えました。

5.
海外での
受け止められ方

評価は一様ではありません。

肯定的な受容としては、既存の美の基準とは別の軸を提示したという評価があります。完璧さや成熟を価値とする美意識に対して、未完成さや小ささを肯定する。

一方、批判的な視点もあります。幼さを価値とする美意識が、特に女性に対して未熟さを求める圧力として働くのではないか、という指摘です。

この議論は日本国内にもあります。大人が「かわいい」と評価されることを歓迎する文化が、成熟を否定的に扱っていないか。

どちらの見方も一面を捉えており、単純な結論は出ていません。

6.
cute との
ずれ

kawaii が原語のまま使われるのは、cute との意味のずれがあるためです。

cute は主に見た目の愛らしさを指します。対象は子ども、動物、小さいもの。

kawaii の適用範囲はより広い。振る舞い、声、状況、失敗、さらには不格好なものにまで及びます。「不細工でかわいい」という言い方は、cute では成立しにくい。

前述の「不憫」という経路が、この広さに関係しているとも考えられます。完璧でないもの、弱いものへの肯定的な感情が、語の中に残っている。

7.
現代の用法の
広がりすぎ

近年の「かわいい」は、適用範囲が広がりすぎているという指摘があります。

対象が人や物に限られず、状況、発言、失敗、さらには自分自身にまで及ぶ。何にでも使える便利な語になった一方、何を評価しているのかが不明瞭になりました。

会話の中で相づちとして使われる場面も増えています。この用法では、もはや愛らしさを表していません。

国語学の研究では、複合語としての使われ方の変化も分析されています。「エモかわいい」「ゆめかわいい」のような造語が次々に生まれ、意味の細分化が進んでいる。

語が広く使われるほど、個々の意味は薄くなります。「かわいい」の歴史は、この現象の実例として読むこともできます。

もとは「恥ずかしい」
という意味だった

「かわいい」は、恥ずかしいという意味から出発し、不憫を経て、愛らしいへ至った語です。この経路が、現在の用法の広さと、cute との違いを生んでいます。

海外でkawaiiと言われたとき、相手が何を指しているのかは、必ずしも日本語と同じではありません。語の来歴を知っておくと、その差が説明できます。

出典:「かわいい」の語源と語誌に関する国語学の解説ほか

Filed in

Which way?

留学とワーホリ、自分に合うのはどちらか。

診断してみる →