笑顔は万国共通、とよく言われます。ところが44か国・4,519人を対象にした研究では、6か国で「笑っている人のほうが知性が低い」と評価されました。
Krysらが2016年にJournal of Nonverbal Behaviorで発表した研究です。18か国では笑顔が知性の評価を上げ、20か国では差がなく、残る6か国では下げた。笑顔の意味は、国境を越えると変わります。
44か国の調査で分かったこと
- 笑顔が知性評価を上げた国:18か国
- 差がなかった国:20か国
- 下げた国:6か国
- 不確実性の高い社会ほど、見知らぬ人への笑顔が不審に受け取られやすい

1.
「明るさ」は
翻訳されない
研究チームは、この差を社会の不確実性と結びつけて説明しています。先の読めない環境にある社会では、理由のわからない笑顔が「何か隠しているのではないか」という解釈につながりやすい。相関は r=.63 と強いものでした。
日本で「感じのいい人」とされる振る舞いが、そのまま持ち込めるとは限らないということです。営業スマイルのような、状況と切り離された笑顔ほど誤解されやすい。
逆に言えば、笑顔そのものをやめる必要はありません。理由が見える笑顔にすればいい。相手の話に反応して笑う、名前を呼びかけながら笑う。文脈が伴えば解釈の余地は狭まります。
2.
沈黙の扱いが
評価を分ける
会話中の沈黙をどう扱うかは、文化によって許容量が大きく違います。間を置くことが思慮深さと受け取られる社会もあれば、関心の欠如と受け取られる社会もある。
日本語の会話に慣れていると、相手が話し終えてから一拍置く癖がつきます。この一拍が、テンポの速い会話文化では「話についてきていない」と読まれることがある。
対策は単純で、内容のある返答を用意できないときでも、短い相づちを先に返すこと。処理中であることが相手に伝われば、沈黙の意味は変わります。

3.
質問の量が
印象を決める
「明るい人」として記憶される人は、たいてい話す量ではなく質問の量が多い。自分の話を続ける人より、相手に話させる人のほうが好意的に記憶されます。
言語が不自由なときほど、この戦略は有利に働きます。長い説明を組み立てる負荷を避けながら、会話を成立させられる。語学力が足りないから黙る、という選択より結果が良くなります。
4.
ユーモアは
最後に足す
冗談は文化差の影響を最も受ける領域です。皮肉が親密さの表現になる社会もあれば、攻撃と受け取られる社会もある。自虐が謙虚さと読まれる社会もあれば、自信のなさと読まれる社会もあります。
相手の笑いどころを観察するまでは、冗談を持ち込まないほうが安全です。明るさを出したいなら、まず反応の速さと表情で示す。ユーモアは共通の土台ができてからで間に合います。

5.
柔軟さは
結論を保留する力
適応力という言葉はよく使われますが、実際に必要なのは「判断を急がない」という態度です。
見慣れない習慣に出会ったとき、評価を下す前に背景を聞けるかどうか。ここで「変わっている」と言ってしまう人と、「どうしてそうするのか」と聞ける人とで、その後の関係が分かれます。
笑顔の量ではなく合わせる速さ
海外で通用する明るさは、表情の量ではありません。相手の反応を見て調整できるかどうかです。
次に異文化の場に出るなら、最初の30分は観察に使ってください。その場の人がどのくらい笑い、どのくらい沈黙を許すか。合わせる基準はそこにあります。
出典:Krys, K. et al. (2016) “Be Careful Where You Smile: Culture Shapes Judgments of Intelligence and Honesty of Smiling Individuals.” Journal of Nonverbal Behavior, 40(2), 101-116.






