交流イベントで連絡先を交換した相手のうち、3か月後も連絡を取っているのは何人でしょうか。多くの場合、ゼロに近い。参加した回数ではなく、そのあとの動き方で差がつきます。
日本の大学や日本語学校に在籍する外国人留学生は、2025年5月1日時点で40万8,069人。前年から21.2%増え、過去最多になりました。国内のキャンパスでも、海外の留学先でも、留学生向けのイベントに出る機会は増えています。目的がはっきりした場だからこそ、準備の有無がそのまま結果に出ます。押さえる点は4つです。
この4点だけ押さえる
- どんな顔ぶれが来る場なのかを事前に10分だけ調べる
- 自己紹介を30秒の型にしておく
- 最初の30分は、母語が通じる相手と固まらない
- 48時間以内に一度だけ、会話の中身に触れた連絡を送る

友だちができないのは、珍しいことではない
最初に数字をひとつ。ニューヨーク市立大学バルーク校のエリザベス・ガレイス准教授が2012年に発表した調査では、米国の10の州立大学に通う留学生454人のうち、約4割が「親しいアメリカ人の友人はひとりもいない」と答えました。同じくらいの割合の学生が、もっと深い交流がほしいと回答しています。
満足度がもっとも低かったのは東アジア出身の学生でした。しかも東アジアの学生の78%は、うまくいかない原因を自分の側、つまり語学力や内気さにあると考えていました。英語圏出身の学生は満足度が高く、地域では南部の大学が高く、ニューヨーク都市圏が最も低い結果です。ガレイス准教授は、親しい友人がいることが語学力や学業、現地の生活への適応を支えると指摘しています。
この調査から分かるのは、イベントに出て友人ができないのは個人の失敗というより、構造的に起きやすいことだという点です。放っておけば関係は生まれない。だから、狙って動く価値があります。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 対象 | 米国10大学の留学生454人(2012年発表) |
| 親しいアメリカ人の友人がゼロ | 約40% |
| もっと交流したいと回答 | 約40% |
| 満足度が最も低い出身地域 | 東アジア |
| 原因を自分の側にあると考えた東アジア出身者 | 78% |
1.下調べは10分で足りる
調べるのは主催者と参加者層の2つだけです。学部主催なのか国際交流課なのか、対象が新入生なのか在学生全体なのか。それだけで、その場に何を期待していいかが分かります。
参加者の出身国が事前に分かるなら、その国について1つか2つ話題を持っておく。首都や有名な料理を並べる必要はありません。むしろ「その国の学生が日本に来る理由」のような、本人が答えたくなる問いを1つ用意するほうが会話が続きます。
日本国内のイベントなら、顔ぶれの予想は数字からもつきます。2025年の留学生の出身国・地域は、中国が13万1,097人、ネパールが10万239人、ベトナムが4万3,366人、ミャンマーが2万9,413人、スリランカが1万7,626人の順。在籍先で見ると日本語教育機関が14万174人と最も多く、大学の学部生は9万2,442人です。大学のイベントと日本語学校のイベントでは、来る人の年齢層も日本語の水準もかなり違います。
| 在籍先 | 留学生数(2025年5月1日) |
|---|---|
| 日本語教育機関 | 14万174人 |
| 専修学校(専門課程) | 10万6,829人 |
| 大学(学部) | 9万2,442人 |
| 大学院 | 6万13人 |
| 短期大学 | 4,138人 |
イベントの種類も確認しておきます。国際交流課のウェルカムパーティーは人数が多く、1人と話せる時間が短い。言語交換(ランゲージ・エクスチェンジ)の会は1対1で話す時間が長い代わりに、相手の学びたい言語に付き合う必要があります。バディ制度のように相手が決まっている場なら、下調べはその1人に絞れます。
2.自己紹介は30秒の型を作る
その場で考えると必ず長くなります。名前、出身、専攻、そして相手が拾いやすい一言。この4つを30秒に収める形を、日本語と外国語の両方で作っておきます。
拾いやすい一言というのは、質問しやすい具体のことです。「趣味は音楽です」では続きません。「週末はレコード屋を回っています」なら、相手は何のジャンルかを聞けます。会話が続くかどうかは、相手に質問の余地を渡せているかで決まります。
| 要素 | 弱い例 | 拾いやすい例 |
|---|---|---|
| 出身 | 東京出身です | 東京の、築地市場の近くで育ちました |
| 専攻 | 経済学部です | 経済学部で、観光の統計を調べています |
| 趣味 | 音楽が好きです | 週末はレコード屋を回っています |
| 最近のこと | 留学に興味があります | 来年の春、台湾に半年行く予定です |
型を作ったら、声に出して時間を計ってください。外国語だと、同じ内容でも日本語の1.5倍ほどかかることがよくあります。30秒を超えたら、専攻か出身のどちらかを削る。全部を言う必要はありません。相手が聞き返してきたら、そこで足せばいいのです。
外国の人から日本について聞かれやすい話題は、外国人が日本人に聞きたい8つの話題にまとめています。質問を受けたときの答えを1つ2つ用意しておくと、自己紹介のあとが続きます。
3.母語が通じる相手だけで固まらない
日本語が通じる相手を見つけると、そこから動けなくなります。安心できるぶん、その場に来た意味が薄くなる。
対策は単純で、開始から30分は日本語を使わないと決めておくこと。時間で区切れば、意志の強さに頼らずに済みます。30分たって疲れたら日本語の輪に戻ればいい。
輪に入るときは、3人以上で話している集団より、1人か2人でいる人に声をかけるほうが楽です。飲み物や食べ物のテーブルの近くは、自然に人が入れ替わるので話しかけやすい場所です。会話を切り上げるときは「ほかの人にも挨拶してきます」と一言添えれば、失礼にはなりません。

最初の会話で選ぶ話題、避ける話題
自己紹介のあとに何を聞くかで、会話の長さが決まります。答えやすいのは、相手が自分で選んだことについての質問です。なぜこの大学を選んだのか、日本(あるいはこの国)に来て意外だったことは何か、休みの日はどこへ行くか。どれも正解がなく、本人にしか答えられません。
反対に、初対面では避けたほうがいい質問もあります。日本では年齢を聞くのはごく普通ですが、欧米出身の学生の中には、初対面で年齢を聞かれることに違和感を持つ人がいます。収入や学費の額、宗教、政治の立場、体型や見た目についての感想も、相手との距離が縮まるまでは持ち出さないのが無難です。
| 話題 | 最初の会話で | 理由 |
|---|---|---|
| この学校を選んだ理由 | 向いている | 本人にしか答えられず、話が広がる |
| 来てから意外だったこと | 向いている | 体験談になり、こちらも質問を返しやすい |
| 出身地のおすすめの食べ物 | 向いている | 具体的な名前が出て、あとで連絡する口実になる |
| 年齢 | 様子を見て | 聞かれて気にする文化圏がある |
| 収入・学費の額 | 避ける | お金の話を嫌う人が多い |
| 宗教・政治 | 避ける | 関係ができてからでないと誤解を生みやすい |
| 見た目や体型 | 避ける | 褒め言葉のつもりでも失礼になることがある |
出身地のおすすめの食べ物は、特に使いやすい話題です。料理名を教えてもらえば、48時間以内に送る連絡の中身がそのまま手に入ります。「教えてもらった料理、近くに店があったよ」と送れば、会話の続きとして自然に返事がもらえます。
4.48時間以内に一度だけ連絡する
連絡先の交換は、関係の始まりではなく可能性の確保にすぎません。日がたつほど、相手の中で「どの会話の誰だったか」がぼやけていきます。
イベント当日か翌日に、短いメッセージを一度送る。「昨日話した〇〇の件、調べたらこうだった」のように、会話の中身に触れるのが確実です。挨拶だけのメッセージは返信されにくい。
返事が来なくても追撃はしません。一度送っておけば、次に顔を合わせたときの入り口になります。関係は一度で作るものではなく、回数で積むものです。
| 送るもの | 例 | 反応 |
|---|---|---|
| 挨拶だけ | 今日はありがとう! | 返しにくい。スタンプで終わりやすい |
| 会話の続き | 話してた高雄の屋台、調べたらこの店だった | 返事の内容が決まっているので返しやすい |
| 次の予定 | 来週の言語交換、また行く? | はい・いいえで答えられる |
| 長文の自己紹介 | 改めまして……(数百字) | 読む負担が大きい |
言語交換の会なら、時間を半分に区切る
言語交換は、相手の母語を教わる代わりに自分の母語を教える形のイベントです。うまくいかない原因の多くは、どちらか一方の言語だけで会話が進んでしまうことにあります。英語が得意な相手と話すと、気づけば1時間ずっと英語だった、ということが起きやすい。
始める前に「最初の15分は日本語、次の15分は英語」のように時間を区切っておくと、この偏りを防げます。スマートフォンのタイマーを机に置いておけば、交代の合図になります。
間違いを直してほしいかどうかも、最初に伝えておきます。話の途中で毎回直されると会話が止まるので、「気になった表現は最後にまとめて教えて」と頼むのが現実的です。教わった言い回しはその場でメモしておくと、次に会ったときの話題にもなります。
| やること | 目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 時間を区切る | 15分ずつ交代 | 片方の言語に偏らないため |
| 訂正の頼み方を決める | 最後にまとめて | 会話の流れを止めないため |
| 教わった表現をメモ | その場で1〜3個 | 次回の話題と復習に使える |
| 次の約束 | その場で日時を決める | 「また今度」は実現しにくい |
お酒と食事で気をつけること
交流イベントには、飲み物や軽食がつきものです。ここで知っておきたいのが、飲酒年齢の違いです。日本では2022年4月に成年年齢が18歳に引き下げられましたが、飲酒と喫煙は20歳未満禁止のまま変わっていません。18歳から飲める国の出身者が多いので、日本の大学1年生のイベントでは誤解が起きやすいところです。
食べ物にも配慮が要ります。イスラム教徒の学生は豚肉とアルコールを避けます。ヒンドゥー教徒は牛肉を口にしない人が多く、2025年に日本の留学生で2番目に多かったネパール出身の学生にも当てはまることがあります。ベジタリアンやヴィーガンの学生もいます。持ち寄り形式なら、料理に原材料を書いた札を添えるだけで、食べられるかどうかを本人が判断できます。
| 食習慣 | 避けることが多いもの | その場でできる配慮 |
|---|---|---|
| イスラム教徒 | 豚肉、アルコール(調味料のみりん・酒を含む場合も) | 原材料の表示、ソフトドリンクの用意 |
| ヒンドゥー教徒 | 牛肉 | 肉の種類を明記する |
| ベジタリアン | 肉、魚(人による) | 野菜だけの皿を分けておく |
| 日本の20歳未満 | アルコール | ノンアルコール飲料を同じ量用意する |
飲めない人に理由を聞き出す必要はありません。「何を飲む?」と選択肢として聞けば、相手は説明せずに済みます。
連絡先は、相手の国で使われているアプリで
連絡先を交換するときに見落としやすいのが、アプリの違いです。日本ではLINEの国内月間利用者が2025年12月末に1億人を超えましたが、世界共通の連絡手段ではありません。
韓国ではカカオトーク、中国本土ではWeChat(微信)が生活の基盤になっています。ヨーロッパや中南米、インドなどではWhatsAppが主流です。中国本土ではLINEやWhatsApp、Instagramに接続できないため、中国出身の相手が一時帰国すると連絡が途切れることがあります。学生同士なら、国を問わずInstagramのDMで済ませることも多いでしょう。
| 地域 | よく使われる連絡手段 | 交換するときの一言 |
|---|---|---|
| 日本・台湾・タイ | LINE | QRコードを見せ合うのが早い |
| 韓国 | カカオトーク | IDを聞くか、電話番号で追加 |
| 中国本土 | WeChat(微信) | アプリ内のQRコードで追加。帰国中はほかのアプリが使えない |
| ヨーロッパ・中南米・インドなど | 電話番号がそのままIDになる | |
| 学生同士(地域を問わず) | InstagramのDM | アカウント名を聞くだけで済む |
電話番号を教えることに抵抗があるなら、InstagramやLINEのIDのように、番号を出さずに済む方法を選べば十分です。初対面で住所や学籍番号まで伝える必要はありません。
海外の留学先で参加する場合
日本から海外へ留学した学生は、2024年度に9万1,054人でした。このうち5万7,262人は、大学間の協定などにもとづく留学です。協定校に行く場合、現地の大学が学期初めに留学生向けのオリエンテーションや歓迎会を開くことがほとんどです。
海外で参加するときも、4つのコツはそのまま使えます。違いがあるとすれば、自分が「少数派の外国人」になる点です。先ほどのガレイスの調査では、ニューヨークのような大都市圏の大学ほど、留学生の友人関係の満足度が低い傾向がありました。人が多く、誰もが忙しい街ほど、声をかけてもらうのを待っていては始まりません。
留学先での過ごし方全般については、留学先での語学勉強で気をつけたい5つのことも参考にしてください。
イベントのあとに続く関係を作るには
1回のイベントで親しくなる相手は、多くても1人か2人です。関係を太くするのは、2回目、3回目に会う機会のほうです。定期的に開かれる言語交換や、サークル、ボランティアのように同じ顔ぶれがそろう場を1つ持っておくと、48時間以内に送った連絡が生きてきます。
大学によっては、留学生1人に在学生がついて生活や履修を手伝うチューター制度やバディ制度があります。イベントより接点が多く、同じ相手と何度も会う仕組みになっているので、関係が続きやすい場です。募集は学期の初めに国際交流課から案内されることが多く、見逃すと次の学期まで待つことになります。
一方で、イベントで知り合った相手からSNS経由で投資やアルバイトの話を持ちかけられたら、その場で返事をしないでください。交流の場で出会ったことは、相手を信用する理由になりません。お金が絡む話は、大学の学生相談窓口や家族に一度相談してから判断するのが安全です。
留学先で人間関係に疲れたときは、無理にイベントへ出る必要はありません。気持ちが沈んだときの対処は留学中に気持ちが落ち込んだときの8つの対処法で扱っています。

勝負は帰ったあとの48時間
4つのうち、効果が大きいのは4番目です。準備や自己紹介は当日の居心地を良くしますが、あとに残るのは連絡を送ったかどうかだけ。
次のイベントに出るなら、終了後の48時間を先に予定に入れておいてください。送らなかった連絡先は、ただの文字列で終わります。
出典:日本学生支援機構(JASSO)「2025(令和7)年度外国人留学生在籍状況調査」、Newswise「Many International Students Have Few Close American Friends, Survey Says」(Gareis, E. Journal of International and Intercultural Communication, 2012)、LINEヤフー「LINE、国内月間利用者数が1億ユーザーを突破」(2026年1月29日)







