英語ができると年収は上がるのか?調査データで検証する

TOEIC900点以上の人の平均年収は965万円。一方、499点以下の人は688万円で、500点台の647万円を上回っています。日経転職版が登録会員のデータを集計した結果です。

英語ができれば年収が上がる、という話はよく聞きます。ただしデータを並べると、きれいな右肩上がりにはなりません。何が起きているのかを順に見ていきます。

TOEICスコア別の平均年収(日経転職版の集計)

  • TOEIC900点以上:965万円
  • 800点台:845万円
  • 700点台:725万円
  • 600点台:670万円
  • 500点台:647万円
  • 499点以下:688万円

1.
データの形を
まず確認する

目を引くのは最下段です。499点以下の688万円が、500点台と600点台を上回っている。英語力が上がるほど年収が上がるという仮説では説明できません。

考えられる説明は単純です。英語をまったく使わない専門職や管理職が、この層に含まれている。医師、士業、国内完結の技術職、現場のマネジメント。英語のスコアを持たないまま高い年収を得ている人たちが、低スコア帯の平均を押し上げています。

つまりこのグラフは「英語力の効果」ではなく「英語を使う職種と使わない職種が混ざった分布」を映しています。

2.
差が開くのは
700点より上

一方で、中位以上の帯では規則性が見えます。600点台から700点台への差は55万円、700点台から800点台への差は120万円。スコアが上がるほど差の幅が広がっています。

この段階に入ると、英語を要件とする仕事に実際に就けるかどうかが分かれ始めるためだと考えられます。700点前後が、求人の応募条件として設定されやすい水準にあたる。

逆に言えば、600点前後で止めると、投じた時間に対して見返りが出にくい。中途半端な位置が最も効率が悪い区間です。

3.
職種と年代で
差の大きさが違う

転職サービスのDaijob.comが2026年1月に公表した分析では、英語を使う仕事とそうでない仕事の年収差が、層ごとに示されています。

層年収の倍率金額差
50代女性1.9倍319万円
金融・投資・保険関連の40代1.5倍284万円
金融関連全体1.4倍183万円
50代男性1.3倍228万円
エグゼクティブ・経営1.3倍215万円

差が大きいのは、金融と経営層、そして50代です。若年層ではこれほど開きません。

理由は業務の構造にあります。金融は一次情報が英語で流れ、取引相手も海外にいる。経営層は海外拠点や投資家との対話が業務そのものです。英語ができないと職務が成立しない領域ほど、差が金額に変わります。

年代で差が開くのは、時間の蓄積が効くためです。英語を使える人が海外案件を担当し、その実績が次のポジションにつながる。20年続けば、開始時点の小さな差が年収の倍率になります。

4.
因果の向きは
確定していない

ここが本題です。以上のデータはすべて相関であって、因果関係を示したものではありません。

考えられる向きは3つあります。英語力が年収を押し上げた。年収の高い職種にいる人が、必要に迫られて英語を学んだ。あるいは、学習を継続できる資質そのものが、英語力と年収の両方に効いている。

3つ目は軽視できません。仕事をしながら数年かけて語学を仕上げる人は、計画を立てて実行する力を持っています。その力は英語以外の場面でも評価されます。英語が原因なのか、英語を身につけられる性質が原因なのかは、この種のデータでは切り分けられない。

したがって「英語をやれば年収が上がる」という期待の持ち方は、正確ではありません。「英語が条件になっている仕事に移れば、その仕事の水準の報酬になる」というほうが実態に近い。

5.
AIが普及しても
価値は落ちていない

機械翻訳と生成AIの普及で、英語学習の価値は下がったのか。データはそうなっていません。

Daijob.comの分析では、年収1,000万円以上の層の生成AI利用率は42.1%でした。AIを使う層と英語力を持つ層は重なっていて、置き換わってはいない。分析は「専門性×AI活用×英語力」の掛け合わせを指摘しています。

実務の感覚とも一致します。AIは読解と下書きの速度を上げますが、会議での即応、交渉での言い回しの選択、相手の反応を見ての修正までは代わりません。読む作業が効率化されるほど、話す場面の比重が相対的に上がります。

6.
投資すべきか
判断する手順

データから言えるのは、効く人と効かない人がはっきり分かれるということです。自分がどちら側かを先に見積もってください。

投資判断の手順

  • 自分の職種の求人10件を開き、英語要件がいくつにあるか数える
  • 自社の昇格要件にスコア基準があるか確認する
  • 業界の一次情報が英語で出ているか確認する
  • 以上が当てはまらないなら、英語以外の技能に時間を配分する

国内完結の職種で、業界情報も日本語で十分に流通しているなら、英語に数百時間を投じる合理性は低くなります。その時間を専門性に回したほうが、年収への効き方は速い。

逆に、金融、コンサルティング、外資系、海外取引のある製造業。この領域なら、700点台で止めずに800点以上と実務での運用まで持っていく価値があります。

7.
スコアと実務力は
別物である

もうひとつ、データを読むうえで外せない注意点があります。TOEICのスコアは、実務で使える英語力とかなりずれます。

TOEIC L&Rは読解と聴解だけを測る試験です。話す力と書く力は測っていません。900点を持っていても会議で発言できない人がいるのは、試験の設計上むしろ自然なことです。

逆のずれもあります。現場で日常的に英語を使っていて交渉も通しているのに、試験形式に慣れていないためスコアが700点台にとどまる人がいる。この人の実務能力は、900点の人を上回っている可能性が十分にあります。

採用や昇格の場面では、この二つが混同されがちです。企業がスコアを要件にするのは、実務能力を測る手間を省くための代理指標としてであって、スコアそのものが欲しいわけではありません。

自分の目的がどちらかで、やるべきことが変わります。昇格要件を満たすのが目的ならテスト形式の練習が最短です。仕事で使えるようになるのが目的なら、スコアを上げる練習は遠回りになります。同じ「英語の勉強」という言葉でも、中身は別物として扱ってください。

数字は動いている。
ただし向きは分からない

英語力と年収には相関があります。ただし関係は単純な比例ではなく、700点より上で差が開き、職種と年代によって効果の大きさがまったく違う。

そして因果の向きは確定していません。英語が年収を上げるというより、英語が条件になっている仕事に移れるかどうかの問題として捉えるほうが、判断を誤りません。

まずは自分の業界の求人を10件見てください。英語要件が3件以上にあるなら投資の価値があり、0件なら別の技能を優先する。判断材料はそこにあります。

社会人が英語を習得するメリットを実務面から整理した記事はこちら:社会人が英語を習得する6つのメリット|年収・昇進・キャリアへの実際の効き方

出典:日経転職版(日経リサーチ)TOEICスコア別平均年収/Daijob.com 登録者データ分析(2026年1月公表)

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