ふわふわと揺れるスフレチーズケーキは、日本で生まれたケーキです。1960年代、菓子職人の久野智太郎がベルリンを訪れ、ドイツのチーズケーキ「ケーゼクーヘン」をもとに考案したとされています。海外では「ジャパニーズ・チーズケーキ」と呼ばれ、日本を代表するケーキのひとつになりました。
ニューヨークチーズケーキの濃厚さとも、ドイツのケーゼクーヘンのしっかりした食感とも違う、軽い口どけ。この記事では、スフレチーズケーキの特徴と誕生の経緯、ふわふわに焼ける仕組み、ほかのチーズケーキとの違い、家庭で作るときのコツをまとめます。
スフレチーズケーキの基本
- 1960年代に日本で生まれたチーズケーキ
- ドイツのケーゼクーヘンをもとに考案されたとされる
- 卵白を泡立てたメレンゲと、湯煎焼きでふわふわに仕上げる
- 海外では「ジャパニーズ・チーズケーキ」として知られる
スフレチーズケーキとはどんなケーキか

スフレチーズケーキは、クリームチーズに卵黄やバター、牛乳を合わせた生地に、泡立てたメレンゲを加えて焼くケーキです。「スフレ」はフランス語で「ふくらんだ」を意味し、名前のとおり、焼き上がりは大きくふくらみます。
食感は、口に入れるとすっと溶けるような軽さです。チーズの風味はありますが、濃厚なチーズケーキに比べて甘さもチーズ感も控えめで、甘いものが苦手な人にも食べやすいケーキです。
焼きたては温かく、スフレのようにふるふると揺れます。冷やすと生地が落ち着き、しっとりとしたシフォンケーキに近い食感に変わります。温かいまま食べるか、冷やして食べるかで、ひとつのケーキを二通りに楽しめます。
ドイツのケーゼクーヘンから生まれた
スフレチーズケーキのもとになったとされるのが、ドイツの「ケーゼクーヘン(Käsekuchen)」です。ドイツ語で「チーズのケーキ」を意味し、クワルクと呼ばれるフレッシュチーズを使って焼き上げます。
1960年代、菓子職人の久野智太郎がベルリンでケーゼクーヘンを食べ、その味をもとに日本人の好みに合うチーズケーキを考えたと伝えられています。当時の日本ではクワルクが手に入りにくく、クリームチーズを使い、メレンゲで軽さを出す工夫が加えられました。
こうして生まれたふわふわのチーズケーキは、日本の洋菓子店に広まり、やがて専門店が生まれるほどの人気になりました。大阪や福岡など各地に名物の店ができ、焼きたてを求めて行列ができる光景も珍しくありません。
ケーゼクーヘンとはどんなケーキか
スフレチーズケーキのもとになったドイツのケーゼクーヘンは、ドイツで最も親しまれているケーキのひとつです。家庭でもよく焼かれ、パン屋やカフェの定番でもあります。
使うのは、クワルクと呼ばれるフレッシュチーズです。クリームチーズより脂肪分が少なく、ヨーグルトのようなさわやかな酸味があります。底にタルトのような生地を敷き、クワルクに卵や砂糖を合わせた生地を流して焼くのが基本の形です。
レーズンを入れたり、表面にメレンゲをのせたりと、地方や家庭によって作り方はさまざまです。底の生地を敷かない「ボーデンなし」のケーゼクーヘンもあり、これはスフレチーズケーキにより近い形です。
クリームチーズという材料
日本のスフレチーズケーキに使われるクリームチーズは、19世紀の後半にアメリカのニューヨーク州で作られ始めたとされるチーズです。生クリームを加えた濃厚なフレッシュチーズで、なめらかな口当たりが特徴です。
ドイツのクワルクが手に入りにくかった日本で、クリームチーズはケーゼクーヘンの代わりになる材料でした。ただ、クリームチーズはクワルクより重く、濃厚です。そのままでは軽いケーキにならないため、メレンゲで空気を含ませる工夫が生まれたと考えられます。
ふわふわに焼ける仕組み

軽い食感を生む3つの工夫
- 卵白をメレンゲにして、生地に空気を含ませる
- 湯を張った天板で焼く「湯煎焼き」で、じっくり火を通す
- 低めの温度で長く焼き、急にふくらませない
メレンゲ。スフレチーズケーキの軽さは、卵白を泡立てたメレンゲから生まれます。チーズの生地にメレンゲを合わせることで、生地全体に細かな気泡が行き渡り、焼くと大きくふくらみます。シフォンケーキと同じ原理です。
湯煎焼き。天板に湯を張り、その中に型を置いて焼きます。湯の蒸気で生地がしっとりと保たれ、表面が乾きすぎたり、焦げたりするのを防げます。オーブンの熱が直接当たらないので、生地がゆっくり均一に固まります。
低温でじっくり。高い温度で一気に焼くと、生地が急にふくらんで表面が割れ、冷めるときに大きくしぼみます。低めの温度で時間をかけて焼くと、割れにくく、なめらかな仕上がりになります。
材料それぞれの役割
基本の材料
- クリームチーズ:チーズの風味とコクを加える
- 卵黄:生地にコクと色を加え、なめらかにつなぐ
- 卵白:メレンゲにして、生地をふくらませる
- 牛乳やバター:生地をやわらかく、しっとりさせる
- 薄力粉やコーンスターチ:生地の骨組みを作る
- レモン汁:チーズの風味を引き締め、さわやかにする
粉の量は、ほかのケーキと比べてかなり少なめです。粉が多いと生地が重くなり、ふわふわの食感が出ません。コーンスターチを混ぜると、口どけがさらによくなります。クリームチーズは、使う前に室温に戻してやわらかくしておくのがコツです。
ほかのチーズケーキとの違い
| スフレチーズケーキ | ベイクドチーズケーキ | レアチーズケーキ | |
|---|---|---|---|
| 主な特徴 | メレンゲでふわふわ | チーズが濃厚でしっとり | 焼かずに冷やし固める |
| 焼き方 | 湯煎焼き | オーブンで焼く | 焼かない(ゼラチンで固める) |
| 食感 | 軽く、口どけがよい | 重く、なめらか | ひんやり、なめらか |
| 代表例 | 日本のスフレチーズケーキ | ニューヨークチーズケーキ | 日本のレアチーズケーキ |
アメリカのニューヨークチーズケーキは、クリームチーズをたっぷり使い、ずっしりと濃厚に焼き上げます。レアチーズケーキは、焼かずにゼラチンなどで冷やし固めたものです。スフレチーズケーキは、この中でいちばん軽く、チーズの主張も控えめです。表面にうっすらと焼き色をつけたものは香ばしく、白く焼き上げたものはやさしい味わいで、店ごとの焼き色の違いも楽しめます。
近年は、表面を真っ黒に焼いたスペイン発祥のバスクチーズケーキも人気です。同じチーズケーキでも、国や作り方によって、まったく違う食感と味わいになります。
日本でチーズケーキが広まった時代
日本でチーズケーキが広く食べられるようになったのは、1970年代以降とされています。洋菓子店が街に増え、ケーキが特別な日のものから日常のおやつに変わっていった時代です。スフレのほか、焼かずに冷やし固めるレアチーズケーキも、この時代に日本の洋菓子店の定番になりました。
海外で広まった「ジャパニーズ・チーズケーキ」

スフレチーズケーキは、2010年代に入って海外でも広く知られるようになりました。台湾や香港、シンガポールなどアジアの都市を中心に専門店が増え、カナダやオーストラリア、アメリカにも出店が広がっています。
SNSで、焼きたてのケーキがふるふると揺れる動画が拡散されたことも、人気を後押ししました。ドイツのケーゼクーヘンが日本で姿を変え、今度は「日本のケーキ」として世界へ広がった。菓子が国境を越えて行き来する、わかりやすい例のひとつです。
海外の店では、抹茶やチョコレート、チーズの風味を強めたものなど、その国の好みに合わせた味も生まれています。一方で、「日本の味」を売りにして、甘さを控えた基本の味だけで勝負する店も少なくありません。
日本の旅行者が、海外の街角で行列のできる「ジャパニーズ・チーズケーキ」の店を見かけて驚く、という話もよく聞きます。日本では身近すぎて意識しないケーキが、海外では日本らしさを感じさせる特別な菓子として受け止められているのです。
家で作るときの失敗しやすい点
よくある失敗
- メレンゲの泡立てが足りず、ふくらまない
- 焼き温度が高すぎて、表面が割れる
- 焼き上がってすぐにオーブンから出して、しぼむ
- 型の底から湯が入り、生地が水っぽくなる
メレンゲは、ツノがおじぎするくらいの、やわらかめの状態が向いています。固く泡立てすぎると、生地と混ざりにくく、焼いたときに割れやすくなります。
焼き上がったら、オーブンの扉を少し開けて、中でゆっくり冷ますのがコツです。急に冷たい空気に触れると、生地が大きくしぼんでしまいます。底が外れる型を使う場合は、アルミホイルで底をしっかり包み、湯が入らないようにします。
おいしい食べ方と保存
焼きたての温かいスフレチーズケーキは、ふわふわの食感をいちばん楽しめる状態です。冷蔵庫で一晩冷やすと、生地がしっとり締まり、チーズの風味もはっきりします。ベリーのソースやジャムを添えると、酸味がチーズの風味を引き立てます。
保存は冷蔵で2〜3日が目安です。冷凍する場合は1切れずつラップで包み、食べる前に冷蔵庫でゆっくり解凍すると、しっとりした食感が戻ります。
ドイツで生まれ、日本で軽くなり、世界へ広がったチーズケーキ
スフレチーズケーキは、1960年代に日本の菓子職人がドイツのケーゼクーヘンをもとに考案したケーキです。メレンゲと湯煎焼きの組み合わせで、口に入れるとすっと溶ける軽い食感が生まれました。
今では「ジャパニーズ・チーズケーキ」として海外でも知られています。ヨーロッパ生まれの菓子についてはバウムクーヘンとはやザッハトルテとはでも扱っています。
出典:Wikipedia「Japanese cheesecake」、Metropolis Japan「A Short History of Japanese Cheesecake」、Tasting Table「The German Inspiration Behind Japan’s Famous Soufflé Cheesecake」





