語学書「ニューエクスプレス」の使い方|順番通りに進めないほうがいい6つの理由

ニューエクスプレスは、白水社が刊行している語学入門書のシリーズです。扱う言語の幅が広く、日本語の教材が少ない言語でもこのシリーズだけは存在する、という場面が少なくありません。

構成は各課ごとに会話文、単語、文法解説、練習問題という形で、全20課前後にまとまっています。

ただし、この教材を1課ずつ完璧に仕上げながら進めると、途中で止まる人が多い。理由は教材の設計にあります。

6つのポイント

  • 発音の課は飛ばさない
  • 単語は文法に入る前にまとめて眺める
  • 巻末の単語集と本文の語彙は一致しない
  • 表現の解説はノートに抜き出す価値がある
  • 難しい文法は初回で理解しようとしない
  • 1周で完成させず、3周を前提にする

1.
発音は
飛ばさない

多くの言語版で、本編の前に発音の説明が置かれています。ここを飛ばして第1課から始める人が多い。

これは後で高くつきます。文字と音の対応が曖昧なまま進めると、会話文を読むたびに推測することになり、音の記憶が定着しません。

特に、日本語にない音を持つ言語では致命的です。最初の数ページを2〜3日かけて音声と照合しておくと、その後の進度が変わります。

付属の音声は必ず使ってください。文字だけで発音を理解するのは不可能です。

2.
単語を
先にまとめて見る

各課には新出単語のリストがあります。通常は本文を読んでから確認する順序になっていますが、逆にすると負荷が下がります。

先に単語のリストに目を通してから本文を読む。知らない語が減った状態で会話文に入るため、文の構造に集中できます。

完全に暗記する必要はありません。見覚えがある、という状態を作るだけで十分です。

3.
巻末の単語集と
本文の語彙は別

このシリーズには巻末に単語集が付いていますが、本文に出てくる語がすべて載っているとは限りません。

逆に、単語集にあって本文に出てこない語もあります。基本語彙として収録されているためです。

つまり、単語集を覚えれば本文が読めるようになるわけではないし、本文を読めば単語集を網羅できるわけでもない。別々のものとして扱ってください。

実用面では、本文に出てきた語を優先します。文脈の中で覚えた語のほうが定着します。

4.
表現の解説は
抜き出しておく

各課の解説には、文法規則とは別に、慣用的な表現の説明が含まれています。

これらは教材の中に埋もれやすい。文法の説明に比べて分量が少なく、練習問題でも扱われないことがあるためです。

しかし実際の会話で使用頻度が高いのは、こちらのほうです。挨拶、依頼、相づち、断り方。

ノートに抜き出しておくと、後から復習の対象として扱えます。文法の規則は教材を開けば確認できますが、こうした表現は探しにくい。

5.
難しい文法は
初回で理解しない

入門書といっても、後半には複雑な文法が入ってきます。格変化、接続法、動詞の体。言語によって山場は違います。

ここで止まる人が多い。理解できるまで進まないと決めると、その課で何週間も足踏みすることになります。

入門段階では、規則の全体像を把握することより、その言語の輪郭をつかむことが優先されます。難しい課は「こういうものがある」と確認して次に進む。

2周目に戻ったとき、前後の知識が増えているため理解しやすくなっています。初回で完璧を目指さないほうが、結果的に速い。

6.
3周を
前提にする

このシリーズの薄さは利点です。20課前後なら、1周するのに数週間あれば終わります。

1周目は全体を通すことだけを目標にする。理解度は3割で構いません。2周目で文法を確認し、3周目で音読と練習問題に取り組む。

1課を完璧にしてから次へ進む方式だと、最後まで到達する前に力尽きます。全体を見てから細部に戻るほうが、その言語の構造が見えやすい。

このシリーズの
位置づけ

ニューエクスプレスは入門書であって、これ1冊で実用水準には届きません。

到達点としては、その言語の基本的な仕組みを理解し、簡単な文を組み立てられる段階です。CEFRで言えばA1からA2の入口あたりが目安になります。

次の段階に進むには、文法書、単語集、読解教材が別に必要です。言語によっては日本語の教材がそこで途切れるため、英語で書かれた教材に移ることになります。

逆に言えば、この教材の役割は「その言語を続けるかどうかを判断できる状態まで運ぶこと」です。1周してみて面白いと感じるかどうか。その判断材料を得るための本として使うのが適しています。

進め方の例

8週間で3周する組み立て

  • 1週目:発音の章を音声と照合しながら2〜3日かけて
  • 2〜4週目:1課30分で全課を通す(理解度3割でよい)
  • 5〜7週目:2周目。文法解説を読み込む
  • 8週目以降:3周目。会話文の音読と練習問題

挫折しやすい
場面と対処

このシリーズで止まる場所は、だいたい決まっています。

ひとつは、文字体系が異なる言語の最初の数課です。ロシア語のキリル文字、アラビア語、ヒンディー語。文字を覚える段階で、内容が進まない期間が生じます。ここは語学の内容ではなく記憶作業なので、通勤時間などの隙間に割り当てて、本編とは別扱いにすると進みます。

もうひとつは、中盤の動詞変化です。言語によっては、人称と時制と法で数十通りの形が出てきます。全部を覚えようとすると止まる。よく使う形から順に、必要になったときに拾うほうが現実的です。

三つめは、音声を使わなくなることです。最初は聞いていても、途中から文字だけで進めるようになる。そうなると発音が自己流に固まります。各課の会話文だけでも音声を流す習慣を残してください。

いずれの場面でも、止まったら次に進むという原則で乗り切れます。完璧に理解してから進む方式は、入門書には合いません。

止まったら飛ばして先へ

ニューエクスプレスは、1課ずつ完璧に仕上げる教材ではありません。発音だけは丁寧に、あとは早く全体を回して、周回で精度を上げる。

いま途中で止まっている本があるなら、そこから完璧に進めようとせず、最後まで飛ばし読みしてみてください。止まった課には、二周目で戻ってくればいい。

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