世界の学生はどれくらい勉強しているのか|国際比較の数字と、その読み方

世界の学生の勉強時間を比べたデータは、いくつも公表されています。ただし数字だけを取り出すと、ほぼ確実に誤読します。

理由は単純で、何を「勉強時間」に数えるかが国によって違うからです。学校の授業時間、宿題、塾、自習。どこまでを含めるかで結果が変わります。

比較データを読む前に

  • 「勉強時間」の定義が国ごとに違う
  • 学校の授業時間と、学校外の学習時間は別の指標
  • 塾や予備校の扱いが調査によって異なる
  • 自己申告のため、実態との差が生じる

1.
日本の学生

日本の特徴は、学校外学習の比重と、その分布の偏りにあります。

国際的な調査では、日本の中高生の学校外学習時間は、突出して長いわけではないという結果が出ています。一方で、時間をかける層とほとんどかけない層の差が大きい。

つまり平均値が実態を表しにくい構造です。塾に通う層は長時間学習し、そうでない層は短い。

大学生になると傾向が変わります。文部科学省の資料では、日本の大学生の学修時間が諸外国の大学生と比べて少ないという指摘が繰り返されてきました。

高校までの学習量と、大学での学習量が逆転する。この構造は、日本の教育制度の特徴としてしばしば議論されます。

2.
アメリカの学生

アメリカでは、高校までの学習時間は必ずしも長くありません。

一方、大学での学習量は多い。授業ごとに大量の読書課題と提出物が課され、成績が厳格に管理されます。

背景には制度の違いがあります。入学時の選抜より、在学中の成績が重視される構造です。卒業要件を満たせなければ卒業できない。

また、課外活動の位置づけも異なります。スポーツやボランティアが進学の評価対象になるため、学習以外の時間が「無駄」として扱われません。

3.
ドイツの学生

ドイツの特徴は、進路が早期に分岐することです。

小学校修了の段階で、大学進学を目指す学校と、職業教育へ進む学校に分かれる制度が長く採られてきました。

この制度のもとでは、全員が同じ試験に向けて学習するという構図になりません。学習時間の平均という指標が、そもそも意味を持ちにくい。

職業教育の系統では、実習が学習時間の大部分を占めます。机に向かう時間として計測すると、少なく見えることになります。

4.
中国・韓国の学生

東アジアの一部では、学習時間が長い傾向が報告されています。

背景にあるのは、大学入試の位置づけです。一度の試験の結果が進路を大きく左右する制度のもとでは、受験期の学習時間が集中的に伸びます。

塾や予備校の産業規模も大きい。学校外での学習が、制度の一部として組み込まれている状態です。

近年は、過度な競争への対策として、塾の規制や宿題の制限を導入する動きも報じられています。

5.
数字を
比べる難しさ

ここまで見てきたとおり、単純な比較は成立しません。

第一に、学校の授業時間が違います。年間の授業日数、1日の授業時間、長期休暇の長さ。これらが異なれば、学校外の学習時間の意味も変わります。

第二に、調査方法の差があります。多くの国際調査は自己申告に基づいており、回答者の主観が入ります。「勉強していた時間」の申告は、実態より長くも短くもなり得る。

第三に、何を学習とみなすかの文化差があります。読書を学習と数えるか、実習を学習と数えるか。

第四に、平均値の限界です。分布が偏っている国では、平均が誰の実態も表さないことがあります。

6.
比較から
読み取れること

数値の大小を競うのではなく、制度の違いを読むために使うなら、比較には意味があります。

学習時間が長い国には、それを要求する制度があります。一度の試験で進路が決まる、卒業要件が厳しい、資格取得が就職に直結する。

逆に短い国にも理由があります。進路が早く分岐する、実習が中心である、評価軸が学力以外にもある。

つまり学習時間は結果であって、原因ではありません。時間を増やせば学力が上がるという読み方は、因果を取り違えています。

7.
留学を
考えるなら

この違いは、留学先を選ぶときに実務的な意味を持ちます。

アメリカの大学に進学する場合、在学中の学習負荷が日本より重いことを前提に計画を立てる必要があります。アルバイトや旅行に使える時間は想定より少ない。

ドイツの職業教育に入る場合は、実習中心の学び方に適応できるかが問われます。

学習文化の違いは、現地での生活の組み立てに直接影響します。渡航先の制度を調べるとき、学習時間の数字より、何が評価されるのかを見るほうが実用的です。

8.
「勉強時間」で
測れないもの

時間という指標の限界にも触れておきます。

同じ2時間でも、集中して取り組んだ2時間と、机に向かっていただけの2時間では結果が違います。自己申告の調査では、この差は反映されません。

学習の内容も測られません。暗記に費やした時間と、考えることに費やした時間が、同じ「勉強時間」として集計される。

さらに、学校の授業の質も国によって違います。授業時間が短くても密度が高ければ、学校外の学習は少なくて済む。

国際的な学力調査の結果と学習時間が比例しないのは、こうした理由によります。学習時間が長い国が必ずしも上位ではなく、短い国が下位とも限らない。

つまり時間は、投入量の一指標にすぎません。制度や環境を含めて見なければ、何も分かりません。

比べても大して何も分からない

学習時間の国際比較は、定義と調査方法が国ごとに違うため、数字の大小をそのまま比べることはできません。

読み取るべきは時間の長短ではなく、その背後にある制度です。留学を検討しているなら、渡航先で何が評価されるのかを調べてください。

出典:文部科学省「諸外国の教育統計」「学生の学修時間の現状」ほか国際比較調査

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