EUブルーカードは、EU域内で高度技能人材として働くための在留許可です。2021年に制度が改正され、要件が緩和されました。
主な変更点は三つ。必要な雇用契約期間が12か月以上から6か月以上へ、給与要件が平均所得の150%以上から100〜160%の範囲へ、EU域内で別の国へ移動できるまでの期間が18か月から12か月へ。
いずれも取得のハードルを下げる方向です。
2021年改正の要点
- 2021年10月7日に改正指令を採択
- 雇用契約は6か月以上(従来は12か月以上)
- 給与は加盟国の平均所得の100〜160%の範囲で各国が設定
- 12か月の滞在・就労で別の加盟国へ移動可能
- アイルランドとデンマークは適用外

1.
取得の
基本条件
条件は大きく三つです。
第一に、高等教育の学位。原則として大学卒業以上の資格が求められます。職務経験で代替できる国もありますが、条件は国ごとに異なります。
第二に、雇用契約または内定。改正後は6か月以上の契約で足ります。求職の段階では申請できず、受け入れ先が決まっていることが前提です。
第三に、給与水準。ここが実質的な関門になります。
2.
ドイツの
給与基準
具体例としてドイツを見ます。2026年1月1日から適用されている基準です。
| 区分 | 年収の最低基準 | 対象 |
|---|---|---|
| 一般職種 | 50,700ユーロ(月額約4,225ユーロ) | 大学卒業資格を持つ職種全般 |
| 不足職種 | 45,934.20ユーロ(月額約3,827ユーロ) | STEM分野、医療専門職、管理職、新卒者、学位なしのIT技術者 |
不足職種の枠が設けられているのが特徴です。人材が不足している分野では、基準が約5,000ユーロ低く設定されています。
注目すべきは、学位を持たないIT技術者が不足職種に含まれている点です。通常は大学卒業資格が必須ですが、この分野では実務経験で代替できる道があります。
給与基準は毎年見直されるため、申請年の数字を確認する必要があります。

3.
学位の
認定
日本の大学を卒業していても、自動的に認められるわけではありません。
ドイツの場合、Anabinというデータベースで自分の大学と学位が認定されているかを確認します。日本の主要大学の多くは登録されていますが、確認は必須です。
登録がない場合は、中央外国教育局(ZAB)へ同等性の評価を申請することになります。手続きには時間がかかるため、早い段階で着手しておくべき項目です。
4.
永住権までの
期間
EUブルーカードの利点として最も大きいのが、永住権取得までの期間の短さです。
ドイツでは、ドイツ語がB1レベル以上あれば21か月後、A1レベルであれば27か月後に永住権を申請できます。
通常の就労許可では最低5年かかることを考えると、大幅な短縮です。語学の学習が、そのまま在留資格の安定につながる構造になっています。
ただしこれはドイツの制度です。永住までの年数は加盟国ごとに異なるため、渡航先の条件を確認してください。

5.
EU域内の
移動
改正によって、最初の国で12か月滞在・就労すれば、別の加盟国での滞在と就労が可能になりました。従来は18か月でした。
この仕組みがEUブルーカードの特徴です。一国の在留許可でありながら、域内での移動に道が開かれている。
ただし自動的に移れるわけではなく、移動先の国で改めて手続きが必要です。それでもゼロから申請するより負担は小さい。
6.
適用されない国
EUブルーカード制度は、全加盟国に適用されているわけではありません。
アイルランドとデンマークは、この分野の指令に留保を付しており、制度の対象外です。これらの国で働く場合は、各国独自の就労許可制度を使うことになります。
また、各加盟国は指令を国内法に落とし込む形で運用するため、細部の条件は国ごとに違います。給与基準、対象職種、永住までの年数。いずれも共通ではありません。
7.
米国グリーンカードとの
違い
混同されることがありますが、性格が異なります。
米国のグリーンカードは永住権そのものです。取得すれば、雇用の有無に関わらず居住を続けられます。
EUブルーカードは在留・就労許可であって、永住権ではありません。雇用が前提になっており、条件を満たしたうえで別途永住権を申請する流れになります。
取得の難易度も違います。グリーンカードは抽選や長期の順番待ちを伴うことがある一方、EUブルーカードは条件を満たす雇用契約があれば申請できます。
8.
申請の
手順と期間
実際の流れを確認しておきます。
最初にやるべきは学位の確認です。ドイツならAnabinで自分の大学と学位を調べる。登録がなければZABへの評価申請となり、数か月かかることがあります。
次に求人探しです。給与基準を満たす職種でなければ申請できないため、年収の水準が要件に届く求人を探すことになります。
内定を得たら、必要書類を揃えます。パスポート、証明写真、雇用契約書、学位証明書と認定翻訳、住居証明、健康保険の加入証明。
申請は、日本にいる間に在外公館で行う方法と、現地で行う方法があります。国と状況によって可否が分かれるため、事前に確認してください。
審査期間は国と時期によって異なります。数週間から数か月を見込んでおくのが現実的です。
学位が通るかを先に調べる
EUブルーカードは、2021年の改正で契約期間・給与・域内移動の要件が緩和されました。ドイツでは年収5万700ユーロ、不足職種なら4万5,934ユーロが基準です。
検討するなら、まず自分の学位がAnabinで認定されているかを確認してください。認定されていれば、次は志望国の給与基準を満たす求人があるかを調べる。その順序です。
出典:ジェトロ「EU理事会、高度技能労働者の受け入れ拡大に向けブルーカード制度を改正」(2021年)/ドイツのEUブルーカード給与基準(2026年1月1日適用)








