ゲームで英単語を覚える方法には、研究の裏づけがあります。2018年に台湾の研究者が発表したメタ分析では、デジタルゲームを使った第二言語の語彙学習を扱った26本の研究を比べ、ゲーム以外の学習活動と比べた場合に大きな効果が出ていました。
ただし、効果が確かめられているのは主に単語の習得です。ゲームをしているだけで話せるようになるわけではありません。この記事では、英語のゲームで学ぶ6つのメリットと、その効果を学習につなげるゲームの選び方を書きます。
英語のゲームで学ぶ6つのメリット
- 同じ単語に何度も出会うので、繰り返しが苦にならない
- 単語を場面ごと覚えられる
- 間違えても恥ずかしくない
- 英語を読む・聞く量が自然に増える
- 正解か不正解かがすぐに分かる
- 勉強の時間を確保しなくても続く
1.繰り返しが苦にならない

単語を覚えるのに必要なのは、同じ単語に何度も出会うことです。単語帳ではこの繰り返しが作業になり、途中でやめる人が多い。
ゲームでは、同じ単語が場面を変えて何度も出てきます。RPGなら「attack」「defend」「quest」、料理のゲームなら「chop」「boil」「serve」。先に進むために読む必要があるので、覚えようとしなくても目に入る回数が増えます。
2.単語を場面ごと覚えられる
単語帳の「reward=報酬」という対応だけでは、どんな場面で使う言葉なのかが分かりません。ゲームでクエストをクリアして「Reward」と表示されれば、その語が何を指すかは画面が教えてくれます。
場面と一緒に覚えた単語は思い出しやすい。単語の意味を、訳語ではなく状況として覚えることになるからです。

3.間違えても恥ずかしくない
英会話の授業で黙ってしまう理由の多くは、間違えることへの不安です。ゲームのなかでは、選択肢を間違えてもやり直せば済みます。誰かに見られているわけでもありません。
言語学者のクラッシェンは、不安が強いと学習者は入ってくる言葉を受け取りにくくなると考え、これを「情意フィルター」と呼びました。ゲームは、このフィルターが下がりやすい環境です。
4.英語を読む・聞く量が増える
語学の力を伸ばすには、理解できる英語に大量に触れる必要があります。1日30分ゲームをすれば、会話文やメニュー、アイテムの説明文など、かなりの量の英語を読むことになります。
音声のあるゲームなら、耳からも英語が入ります。字幕と音声を両方英語にしておくと、文字と発音を同時に結びつけられます。

5.正解か不正解かがすぐに分かる
問題集を解いて答え合わせをするのは、たいてい解き終わってからです。ゲームでは、選んだ行動の結果がその場で返ってきます。
指示を読み違えれば、キャラクターは違う方向へ歩き出す。すぐに結果が分かることで、どこで理解がずれたのかを振り返りやすくなります。
6.勉強の時間を確保しなくても続く
語学の最大の壁は、続かないことです。ゲームはもともと、続けたくなるように作られています。「勉強の時間」を別に作らなくても、遊ぶ時間がそのまま英語に触れる時間になります。
語学アプリの多くが、連続記録やポイント、ランキングといったゲームの仕組みを取り入れているのも、この性質を利用したものです。
ゲームで伸びるもの、伸びないもの
先のメタ分析で効果が確かめられているのは、語彙の習得です。一方で、話す力や書く力、文法を正確に使う力は、ゲームだけでは伸びにくい。ゲームのなかで英語を「出す」機会は限られているためです。
また、同じ研究では、条件によって効果の大きさがかなり違うことも分かっています。ゲームの作り、学習者の英語のレベル、遊ぶ期間。どんなゲームでも同じように効くわけではありません。
ゲームは、単語と読む量を増やす道具と考えるのが適切です。話す練習は、瞬間英作文のような口に出す練習と組み合わせると効果が出やすくなります。
学習につながるゲームの選び方
| 種類 | 向いている力 | 例 |
|---|---|---|
| 文章の多いRPG・アドベンチャー | 語彙、読解 | 会話やクエスト説明を読み進めるゲーム |
| 単語・パズル系 | 綴り、語彙 | Wordle(英単語当て)、Scrabble |
| シミュレーション | 生活語彙 | 料理や店の経営のゲーム |
| オンライン協力ゲーム | 聞く・話す | ボイスチャットで海外のプレイヤーと遊ぶ |
選ぶ基準はひとつで、今の英語力で7〜8割は分かることです。分からない単語だらけのゲームは、辞書を引く回数が増えて遊びが止まり、結局続きません。
最も手軽なのは、すでに持っているゲームの言語設定を英語に変えることです。内容を知っているゲームなら、英語が分からなくても話の流れが追えます。スマートフォン自体の表示言語を英語にするのも、同じ効果があります。
遊びを勉強に変える3つの工夫
ゲームの時間を学習につなげる方法
- 知らない単語は1日5つだけメモする
- 母語の字幕は切り、英語字幕にする
- 遊ぶ時間を決め、終わったらメモした単語を見返す
メモを5つに絞るのは、遊びを止めないためです。すべての単語を調べていると、ゲームが楽しくなくなります。何度も出てきて意味が分からないと困る単語だけを拾えば十分です。
メモした単語は、翌日と1週間後に見返すと定着しやすくなります。ゲームで出会い、メモで復習する。この組み合わせで、遊びの時間が単語帳の代わりになります。
ゲームでよく出る英語
ゲームの英語には決まった言い回しが多く、覚えてしまえば画面の意味がすぐに分かるようになります。日常会話でも使える語が少なくありません。
ゲームで頻出の英語
- quest:任務、依頼
- inventory:持ち物の一覧
- level up:レベルが上がる
- respawn:倒れたあとに復活する
- cooldown:技を再び使えるまでの待ち時間
- objective:達成すべき目標
- save / load:記録する / 記録を読み込む
inventoryは本来「在庫」「目録」を表す語で、ビジネスの英語でも使います。objectiveも会議や資料で「目標」の意味でよく出てきます。ゲームで覚えた単語が、仕事の英語でそのまま役に立つこともあります。
英語のレベル別の遊び方
初級なら、文章の短いパズルゲームや、子ども向けの教育ゲームから始めると挫折しにくい。日本語で遊んだことのあるゲームを英語設定でやり直すのも、話の筋が分かっているぶん取り組みやすい方法です。
中級は、会話の多いアドベンチャーゲームやRPGが向いています。登場人物のせりふには、教科書に出てこない口語表現が多く含まれます。「gonna」「wanna」のような崩れた形も、ゲームのなかで何度も見るうちに自然に読めるようになります。
上級なら、海外のプレイヤーとボイスチャットで協力するオンラインゲームが、聞く力と話す力を試す場になります。短い指示を素早く伝える必要があるので、とっさに英語を口にする練習になります。ただし、相手を選べない場では乱暴な言葉も飛び交うので、表現をそのまま真似しないよう注意が必要です。
語学アプリの「ゲームらしさ」との付き合い方
多くの語学アプリは、連続学習の記録、ポイント、ランキングといったゲームの仕組みで学習を続けさせます。毎日開く習慣を作るのには、よくできた仕組みです。
一方で、記録を途切れさせないことが目的になり、簡単な問題だけを解いて済ませてしまうこともあります。アプリで毎日続けること自体は無駄ではありませんが、それだけで英語が使えるようになるわけではありません。アプリは入口と習慣づけ、実際に使う練習は別に、と役割を分けて考えると期待外れになりません。
子どもに英語のゲームをさせるとき
子どもは大人より、ゲームのなかの英語をためらわずに口にします。気に入った言い回しを遊びながら真似するのは、子どもならではの強みです。
気をつけたいのは、時間と内容です。遊ぶ時間は家庭で決め、対象年齢の表示を確認する。オンラインでほかのプレイヤーとつながるゲームは、知らない相手とのやりとりが生まれるので、保護者が設定を確かめておく必要があります。
大人が一緒に遊び、出てきた単語について「これってどういう意味だろう」と話すだけでも、ゲームの時間は学ぶ時間に変わります。
ゲームで覚えた英語を使ってみる
ゲームで覚えた単語は、使わないと抜けていきます。覚えた語を、ゲームの外で一度使ってみるのが定着への近道です。
手軽なのは、遊んだ内容を英語で2〜3文だけ書くことです。「Today I finished the first quest. The boss was hard.」。この程度で十分です。SNSに短く投稿したり、同じゲームを遊ぶ海外のファンの掲示板を読んだりするのも、ゲームの英語を実際の英語につなげる方法です。
攻略情報を英語で調べるのもよい練習になります。行き詰まったときに英語で検索すれば、読む必要がはっきりしているので、長い英文でも集中して読めます。
ゲームは単語と読む量を増やす道具。話す練習は別に用意する
英語のゲームで学ぶメリットは、繰り返しが苦にならないこと、場面ごと覚えられること、失敗を気にしなくていいこと。研究が裏づけているのは、主に語彙を増やす効果です。
7〜8割分かるゲームを選び、知らない単語は5つだけ拾う。それを話す練習と組み合わせれば、ゲームの時間は十分に学習の時間になります。旅行で使う英語の目安は海外旅行に必要な英語力はどのくらい?にまとめています。
出典:Tsai, Y.-L. & Tsai, C.-C. (2018) “Digital game-based second-language vocabulary learning and conditions of research designs: A meta-analysis study,” Computers & Education. Krashen, S. (1982) Principles and Practice in Second Language Acquisition








