音読は効きます。ただし、やり方を間違えると時間だけが消えます。
最も多い誤りは、教材を最初から最後まで声に出して読むことです。量をこなせば効果が上がるという前提が、そもそも成り立ちません。
ここでは実際の手順を扱います。なぜ効くのかという研究の話は別の記事にまとめてあるので、必要ならそちらを参照してください。
音読の5原則
- 範囲を絞る(1回につき5文前後)
- 意味を思い浮かべながら読む
- 回数は3〜4回まで
- 翌日に同じ箇所をもう一度
- 発音の練習とは分けて行う

1.
まず黙読で
全体を通す
いきなり声に出さないでください。意味が分からない文を音読しても、音の再生にしかなりません。
最初に黙読して、内容を把握します。分からない単語は調べておく。この段階では速度を気にせず、意味が取れることだけを目標にします。
音読が効くのは、意味の処理を伴うときです。何を言っているか分からないまま声に出す作業は、効果がほとんど期待できません。
2.
覚えたい文を
5つ選ぶ
ここが最も重要な工程です。
黙読した範囲から、自分が使いそうな文を5つ前後選びます。基準は「この表現を自分の口から出したいか」。知識として知っておけばいい文は選びません。
選ぶ数が多すぎると、選んだ意味がなくなります。1ページから20文選ぶなら、全文音読と変わらない。5文前後に抑えてください。
選んだ文には印をつけます。次に開いたときに、その印だけを見れば済むようにしておく。

3.
意味を
思い浮かべながら読む
選んだ文を声に出します。このとき、文字を追うのではなく、その文が表す状況を頭に浮かべる。
「I left my umbrella on the train」なら、電車の座席に傘が残っている場面を思い浮かべながら読む。単語の並びとしてではなく、場面と結びつけて口に出します。
この一手間があるかないかで結果が変わります。機械的な読み上げでは、音の練習にはなっても記憶には残りにくい。
4.
回数は
3〜4回まで
同じ文を何十回も読む必要はありません。
回数を重ねるほど、意味の処理が抜け落ちて自動的な読み上げに変わっていきます。3〜4回を超えたあたりから、効率が落ち始めます。
10回読むなら、5文を2回ずつ読んだほうが結果が出ます。量を増やすのではなく、対象を増やすという考え方です。

5.
翌日に
もう一度開く
その日の音読で終わらせないこと。
翌日、同じ箇所を開いて印をつけた文だけを声に出します。所要時間は1〜2分です。
間隔を空けた復習は、記憶の定着を助けます。音読の効果と復習の効果が重なるため、この1〜2分の投資は割に合います。
さらに1週間後にもう一度開ければ理想的ですが、続かないなら翌日だけでも構いません。
6.
発音練習とは
分けて行う
記憶のための音読と、発音を直すための練習は別物です。
記憶のための音読は、自分のペースで、意味を噛みしめながら読む。速度は遅くて構いません。
発音を直したいなら、手本の音声が必要です。聞いて、真似て、自分の声を録音して比べる。手本なしに声を出し続けると、間違った音が定着します。
この二つを同時にやろうとすると、どちらも中途半端になります。日を分けるか、教材を分けるほうが確実です。
やっては
いけない読み方
効果が出ない5つのパターン
- 意味が分からない文を音読する
- 教材を最初から最後まで全部読む
- 同じ文を10回以上繰り返す
- 速く読むことを目標にする
- 手本なしで発音の矯正をしようとする
「速く読めるようになる」を目標にするのは、特に注意が必要です。速度が上がると、意味の処理が追いつかなくなる。滑らかに読めるようになった一方で、内容が頭に入らなくなっているなら、練習の方向が間違っています。
教材別の
使い分け
音読に向く教材と、向かない教材があります。
会話文が中心の教材は最も向いています。実際に口から出したい表現がそのまま並んでいるため、選ぶ工程が楽になります。語学学校のテキストや、会話集の類がこれにあたります。
説明文や論説文は、記憶のための音読には向きません。自分が言う機会のない文を覚えても使い道がない。読解の練習として黙読するほうが適しています。
教科書付属の音声がある教材なら、発音練習にも使えます。ただし前述のとおり、記憶のための音読とは日を分けるか、工程を分けてください。
自分で作った文を音読する方法もあります。前の記事で触れた「言えなかったことノート」に書き溜めた表現は、自分が実際に必要とした文なので、音読の対象として最も効率がいい。
どれくらいで
効果が出るか
期待する時期を誤ると、途中でやめることになります。
記憶への効果は比較的早く出ます。翌日に同じ文を読み返したとき、前日より楽に読めれば効いています。
会話で口から出てくるようになるまでには、もっと時間がかかります。音読で覚えた表現が、必要な場面で自動的に出るようになるには、実際に使う機会を経る必要がある。
つまり音読は準備工程です。これだけで話せるようにはなりません。覚えた表現を使う場を別に確保して、初めて完結します。
オンライン会話でも、現地の店でも構いません。音読した表現を使ってみる機会を週に一度でも作ると、定着の速度が変わります。
1日の
進め方の例
所要時間15分の構成例を挙げます。
最初の5分で、教材の1ページを黙読し、分からない語を調べる。次の2分で、覚えたい文を5つ選んで印をつける。続く5分で、その5文を意味を思い浮かべながら3回ずつ声に出す。残りの3分で、前日に印をつけた文を読み返す。
毎日この15分を確保するだけで、1週間に35文が手元に残ります。
読む量より読む文を選ぶ
音読は量ではなく選択です。読む範囲を絞り、意味を伴わせ、回数を抑え、翌日にもう一度開く。
今日の学習から変えるなら、教材を開いて覚えたい文に印をつけるところから始めてください。声に出す前の工程が、結果の大半を決めます。
音読が効く仕組みを研究から整理した記事はこちら:音読は語学に効くのか?認知科学が示す「効く音読」と「効かない音読」








